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2D材料の対称性を変えることで将来性が開ける

July, 6, 2021, Troy--光エネルギーを電気に変換、また電気を光に変換できるオプトエレクトロニック材料は、発光、エネルギー収集、センシング技術などに有望なアプリケーションがある。しかし、これらの材料でできたデバイスは、非効率となることがよくあり、大量の有用なエネルギーを熱として失う。現在の効率限界を破るために、光と電気変換の新しい原理が必要とされている。

例えば、効率的なオプトエレクトロニック特性を示す多くの材料は、反転対称性、つまり物理的特性の制約を受けている。これは、材料でエンジニアによる電子を制御、新しいあるいは効率的なデバイスの設計オプションを制限する。Nature Nanotechnologyに発表された研究で、レンセラー工科大学(Rensselaer Polytechnic Institute)の材料科学、光学准教授、Jian Shiをリーダーとする材料科学者とエンジニアのチームは、その反転対称性を破るために歪勾配を利用し、有望な材料、二硫化モリブデン(MoS2)における新しいオプトエレクトロニック現象を初めて実現した。

反転対称性を破るために、チームはMoS2シートの下に酸化バナジウム(VO2)ワイヤを設置した。Shiによると、二硫化モリブデンは、柔軟性のある材料であるので、その元の形状を変形して、VO2ワイヤの曲線に従い、結晶格子内に勾配を作る。

その勾配が材料の反転対称性を破り、結晶内を動く電子が操作可能になる。歪勾配近傍に観察される固有の光応答により電流が材料を流れる。それは光起電力効果として知られており、それを利用して、新しい、また/あるいは高効率オプトエレクトロニクスを設計できる。
「これは、この材料でそのような効果の初の実証である。光電変換中に熱を発生させないようなソリューションがあるなら、その電子デバイスあるいは回路は、改善可能である」とShiは説明している。

酸化バナジウムは、温度に対して非常に敏感であるので、MoS2とVO2材料が結合するところで温度依存性によってもたらされる光起電力効果が、それに応じて光子の勾配を変えることを実証することもできた。

「この発見は、リモート温度センシングに使える新しい原理を示唆している」とポスドク研究者、Jie Jiangは指摘している。

チームがここで実証できたことは、この材料の大きな将来性を示すとともに、反転対称性に悩まされる有利なオプトエレクトロニック特性を持つ他の材料のエンジニアリングでもそのようなアプローチの可能性を示している。

(詳細は、https://news.rpi.edu)