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UC San Diego、薄型大面積デバイスが赤外光を画像に変換

June, 18, 2021, San Diego--スモッグや霧を通して見る。心拍をモニタしながら、同時に、その人の皮膚に触ることなく、血管をマッピングする。シリコンウエハを通して、電子ボードの品質や構成を検査する。これらは、UC San Diegoで電気工学者をリーダーとする研究チームが開発した新しい赤外イメージャの性能の一部に過ぎない。

そのイメージャは、可視光(400~700nm)の外側のスペクトル、短波赤外(1000~1400nm)の赤外スペクトルの一部を検出する。短波赤外イメージングは、サーマルイメージングと混同すべきではない。サーマルイメージングは、身体から発する、さらに長波の赤外波長を検出する。

そのイメージャは、短波赤外光を関心のある物体あるいは面積に照射することで機能する。次に、反射してデバイスに戻ってきた低エネルギー赤外光を、人の眼で見える、より短い高エネルギー波長に変換する。

「それは、不可視の光を可視にする」とTina Ng電気コンピュータ工学教授は言う。

赤外イメージング技術は、数10年前から存在したが、ほとんどのシステムは高価で、大きく、複雑であり、別のカメラとディスプレイを必要とすることが多かった。それらは一般に無機半導体を利用して作られている。無機半導体は、高価であり、硬い。また、ヒ素や鉛などの毒性元素で構成されている。

Ngのチームが開発した赤外イメージャは、こうした問題を克服している。それはセンサとディスプレイを1つの薄型デバイスに統合しており、コンパクトで簡素。有機半導体を利用して構築されているので、低コスト、フレキシブルであり、バイオケミカルアプリケーションでの利用は安全である。また、無機デバイスの一部と比べて画像分解能は優れている。

Advanced Functional Materialsに発表された論文は、さらなる利点を説明している。デバイスは、1000~1400nmの範囲の短波赤外スペクトルを見ることができる、既存の類似のシステムは、1200nm以下しか見れないものが多い。また、それはこれまでで最大ディスプレイサイズの赤外イメージャの1つである。面積は、2cm2。さらに、そのイメージャは、薄膜プロセスを利用して製造されるので、さらに大きなディスプレイに拡大することは容易であり、安価である。

赤外フォトンにエネルギーを与え可視光フォトンにする
そのイメージャは、多層半導体でできており、それぞれが数100nm厚で、相互にスタックされている。これらの層の3つは、それぞれが異なる有機ポリマでできており、イメージャのキープレイヤーである。フォトディテクタ層、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイ層、その間に電子遮断層。

フォトディテクタ層は、短波赤外光(低エネルギーフォトン)を吸収し、次に電流を生成する。この電流がOLEDディスプレイ層に流れ、そこで可視画像(高エネルギーフォトン)に変換される。中間層は、電子遮断層と呼ばれ、OLEDディスプレイ層の電流喪失を防ぐ。これが、そのデバイスが鮮明な画像を生成できる仕組みである。

低エネルギーフォトンを高エネルギーフォトンに変換するこのプロセスはアップコンバージョンとして知られている。ここで特別なことは、そのアップコンバージョンプロセスが電子的であること。「この優位性は、それによって直接赤外から可視光への変換が1つの薄いコンパクトなシステムでできること。一般的なIRイメージングシステムでは、アップコンバージョンは電子的ではないので、データを収集するディテクタアレイ、そのデータを処理するコンピュータ、そのデータを表示する別のスクリーンが必要になる。これが、ほとんどの既存システムが大きくて高価になる理由である」とNgラボのポスドク研究者、論文の筆頭著者、Ning Liは説明している。

もう1つの特徴は、そのイメージャが光学と電子の読み出しの両方で効率的であること。「多機能である」とLiは言う。例えば、研究者が、被験者の手の裏に赤外光を照射すると、イメージャは、被験者の血管の明確な画像を生成するとともに、被験者の心拍も記録する。

研究チームは、その赤外イメージャを使って、スモッグやシリコンウエハを透過して見た。あるデモンストレーションでは、スモッグで満たされた小さなチャンバに“EXIT”のパタンをつけたフォトマスクを置いた。別のデモでは、“UCSD”パタンのフォトマスクをシリコンウエハの背後に置いた。赤外光は両方のスモッグとシリコンを透過し、イメージャは、これらのデモンストレーションで、その文字を読み取ることが可能であることを示している。これは、悪天候で自動運転車の視認支援、またシリコンチップの欠陥検査などのアプリケーションに有用である。

研究チームは、そのイメージャの効率向上に取り組んでいる。

(詳細は、https://ucsdnews.ucsd.edu)