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グラスゴー大学、ホログラフィでイメージングを変革

April, 9, 2021, Glasgow--エンタングルフォトンを使って従来のホログラフィックアプローチの限界を克服する新しいタイプの量子ホログラフィは、医療イメージングの改善、量子情報科学の進歩促進につながる。

グラスゴー大学(University of Glasgow)の物理学チームは、量子力学的エンタングルフォトンを使ってホログラムに情報をエンコードする方法を世界で初めて発見した。

ホログラフィは、クレジットカードやパスポートに印刷されたセキュリティ画像として利用されており、多くの人々に馴染みがあるが、他にも多くの実用的なアプリケーション、データストレージ、医療イメージングや防衛などがある。

古典的なホログラフィは、レーザ光ビームを2つの経路に分割して3D物体の2D表現を作る。一方のビームのパスは、物体波として知らており、それがホログラフの被写体を照射し、反射光はカメラ、あるいは特別なホログラフィックフィルムで集められる。第2のビームのパスはレファランスビームであり、被写体に触れることなく、ミラーから直接収集面で跳ね回る。

ホログラフは、2つのビームが出合う光の位相差を計測することで作られる。その位相は、第1ビームと第2ビームが混合し、相互干渉する量である。それは「コヒレンス」として知られる光の特性により可能になるプロセスである。

グラスゴーのチームの新しい量子ホログラフィプロセスも2つのパスに分かれるレーザ光のビームを使うが、古典的ホログラフィと違い、そのビームは再結合することはない。その代わり、そのプロセスは、量子エンタングルメント、アインシュタインの有名な「遠隔操作」という独特の特性を利用して、ビームが永遠に分離されていてもホログラフィの構成に必要なコヒレンス情報を収集する。

そのプロセスは、ビームを2つに分ける特殊な非線形結晶に青色レーザを照射することで研究室で始まり、そのプロセスでエンタングルフォトンが形成された。エンタングルフォトンは、それらがどんなに遠く離れていても、本質的にリンクしている。エイジェントが一方のフォトンに作用すると、その相方(パートナー)も影響される。チームのプロセスにおけるフォトンは、進行する方向と、偏光の両方でエンタングルしている。

エンタングルしたフォトンの2つのストリームは、次に異なる経路で送られる。一方のフォトンストリームは、古典的ホログラフィで物体波に相当するが、通過するフォトンの減速を計測することで標的物体の厚さや偏光応答をプローブするために使用される。光の波形は、それが物体を透過すると様々な度合いでシフトし、光の位相を変える。

それと同時に、そのエンタングルした相方(entangled partner)は空間光変調器に当たる、つまりレファランスビームと同等である。空間光変調器は、それを透過する光の速度を断片的に減速させる光デバイス。フォトンがその変調器を透過すると、フォトンは、標的物体をプローブしたエンタングル相方と比べて、異なる位相を持つ。

標準的なホログラフィでは、2つの経路が相互に重ね合わされ、それらの間の位相干渉の程度を利用して、カメラにホログラムを生成する。研究チームのホログラフィ量子バージョンの最も際立つ側面では、フォトンは、それぞれのターゲットを通過後、相互にオーバーラップしないことである。

それどころか、フォトンは、一つの「非局所的」粒子としてエンタングルしているので、各フォトンが個別に経験する位相シフトは、同時に両社が共有している。

干渉現象は遠隔的に起こる。またホログラムは、別のメガピクセルデジタルカメラを使って、エンタングルフォトンの位置間の相関関係を計測することで得られる。その物体の高品質位相画像は、4つのホログラムを統合することで最終的に読み出される。ホログラムは、2つのフォトンの1つで空間光変調器で実行された4つの異なるグローバル位相シフトを計測したものである。

チームの実験では、位相パターンは、液晶ディスプレイにプログラムされた文字‘UofG’のような人工的物体から再構成されたが、顕微鏡スライ上の透明なテープ、シリコン油滴や鳥の羽などの実物体からも再構成された。

グラスゴーの物理学・天文学部、Dr Hugo Defienneが論文の主筆。同氏は、次のようにコメントしている。
「古典的なホログラフィは、光の方向、色、偏光では、とても優れているが、限界がある。不要な光源、機械的不安定性に強い影響を受けることからの干渉である。

「われわれが開発したプロセスにより、われわれは古典的なコヒレンスの限界から解放され、ホログラフィを量子の世界に先導する。エンタングルフォトンを使うことで、シャープで非常に詳細なホログラムが実現し、その技術の実用的なアプリケーションに新たな可能性が開ける。

「アプリケーションの一つは、医療イメージングにある。そこではホログラフィはすでに顕微鏡で使われている。半透明になることがよくある繊細なサンプルの細部を精査するためである。われわれのプロセスにより、さらに高い解像度、低ノイズ画像が可能になる。これは、細胞の微細部を明らかにし、細胞レベルで生物学がどのように機能するかについてさらなる研究に役立つ」。

グラスゴー大学教授、Daniele Faccioは、ブレイクスルーを達成したグループのリーダーであり、論文の共著者。

Faccio教授は、「これについて実際に素晴らしいことの一部は、メガピクセルデジタルカメラを検出システムに組みこむ方法を見つけたことである。

「近年の光量子物理学における多くの大発見は、簡素なシングルピクセルセンサを使って達成された。それらは、小さく、素早くて安価であると言う利点があるが、その欠点は、そのプロセスに関わるエンタングルフォトンの状態について非常に限られたデータしかキャプチャできないことである。単一画像でわれわれが収集できる細部のレベルをキャプチャするには膨大な時間がかかる。

「われわれが使っているCCDセンサにより、われわれは各エンタングルフォトンの画像あたり最大10000ピクセルまで、前例のない分解能を利用できる。つまり、われわれは、そのエンタングルの品質を計測し、ビームのフォトン量を非常に正確に計測できる。

「将来の量子コンピュータや量子通信ネットワークは、それらが利用するエンタングル粒子について少なくともそのレベルの詳細さを必要とする。したがってわれわれは、その急速に発展する分野で、有効な実際の段階的変化に一歩近づいた。それは実に素晴らしいブレイクスルーであり、われわれはこの成功に立脚してさらなる改善を進める」。

チームの論文、‘Polarization Entanglement-enabled quantum holography’はNature Physicsに発表された。
(詳細は、https://www.gla.ac.uk)