コヒレント特設ページはこちら

Science/Research 詳細

ETH、多様な光技術に有効な無秩序構成

January, 15, 2021, Zurich--ETH研究チームは、無秩序なナノクリスタルできた微小球(マイクロスフィア)を使い、広帯域光周波数2逓倍向けに効率的な材料を作ろうとしした。その方法の重要なアイデアは、コーヒーブレイク中に生まれた。将来、その新しいアプローチをレーザや他の光技術に利用できるようになる。

光の色を変えること、つまり周波数や波長を変えることは、現在のアプリケーションでは非常に重要である。その方法では、非線形結晶の利用が必要になる。そのような結晶では、特定の周波数の2つのフォトンが、例えば、2倍の周波数を持つ1つのフォトに変えられること、例えば2つの赤を1つの青に変えられる。

しかし、それが機能するには、一般に光は特定の方向と特定の偏光で結晶に当たらなければならない。いわゆる位相整合は、実用的なアプリケーションを厳しく制限することがよくある。研究チームは、効率的な周波数倍増を、精密チューニングなしで実現できる方法を開発した。これは、従来法と比べると、他にも利点がある。

研究チームによると、大きいものではなく小さく、また秩序よりも無秩序の方が良い。「広く適用できる周波数逓倍のためにわれわれは、実際には整合しない2つのアプローチを統合したかった」とプロジェクトリーダー、Romolo Savoはコメントしている。

最初のアプローチでは、1個の大きな結晶の代わりに、多くの微小結晶の集合を利用する。個々の結晶軸はランダムな方向を向いている。その方法では、もはや入力ビームの方向を厳しく制御する必要がない。多くの微小結晶の中には、あるものは好都合な方向に、他のものは好ましくない方向に向いている。しかし、全体として、それらは、常に大きな周波数逓倍を作り出す。

第2のアプローチは、共鳴動作の増強に基づいている。微小結晶の集合が、例えば光波長にほぼ等しい径の球であるなら、球内部の強度は、球壁からの光波の繰り返し反射によって、何倍にもなり、こうして周波数逓倍光が生成される。

したがって、両方の効果を同時に適切に利用するために、研究チームは、無秩序な結晶性粉末をマイクロメートルサイズの球に成形したかった。光の共鳴増強を利用するためである。その目的でチームが利用したかった個々のチタン酸バリウム結晶は、わずか50nm程度に小さくなければならなかった。光を何度も透過させるために透明になり、マイクロスフィアで共鳴が生まれるためである。

多数の微小ナノ結晶を完全なマイクロスフィアに変える方法について、Lucio Isaが提案した。
 ナノ結晶パウダーを水に溶かし、その溶液と油を混ぜ、最後に全てを力強く振る。そのプロセスでできた乳状液内部の水-結晶溶液の微小な泡が形成され、そこから徐々に水が蒸発。最終的に微小な完全に球状の無秩序ナノ結晶が残る。これが、研究チームが求めていたものだった。

そのレシピは、予想以上に機能した。「無秩序なナノ結晶でできた微小球による周波数倍増は、入力光の方向とは独立に、また幅広い周波数で機能する。これにより、従来の結晶による周波数倍増よりも著しく多様になる」とSavoは説明している。。その上、研究チームは、70%少ない材料を使って、同等の周波数倍増収率を得た。一定のサイズを超えると光収率の増加が止まる通常の結晶とは違い、それは、マイクロスフィアの体積とともに増え続けた。

粉末から高品質レーザ結晶
研究チームは、その方法のさらなる改善を考えている。例えば、マイクロスフィアと、それが乗っているガラススライドとの間にスペーサを加える。これは、光損失を最小化するはずだ。研究チームは、可能なアプリケーションについても考え始めた。シンプルで安価なナノ結晶パウダーから高性能非線形結晶を造るという展望は、レーザ技術一般にとって興味深い。また、そのマイクロスフィアを広い領域に広げることも可能である。これは、新しいタイプのディスプレイにつながる。赤外域の画像を可視画像に周波数倍増により直接変換する。そのようなディスプレイは、今度は、セキュリティカメラやライフサイエンスアプリケーションで利用できる。
(詳細は、https://ethz.ch)