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KIT、拡散媒質向けに「隠れ蓑」を作製

June, 11, 2014, Karlsruhe--実際の「隠れ蓑」はかなり複雑で、ある状況でしか機能しない。光学的な隠れ蓑が、方向、色(波長)、偏光によって物を見えなくするのは物理法則である。しかし、媒質が変われば、物を隠すのは遙かに簡単になる。
カールスルーエ工科大(KIT)の物理学研究チームは、霧やミルクなど拡散光散乱媒質向けに理想的な隠れ蓑を、比較的簡単な手段で製造し、テストすることに成功した。
拡散媒質では、光はもはや直線的に進まないが、媒質の中の粒子によって永遠に散乱される。例えば、霧、雲、凍結したガラス板は光を入れるが、光源を隠す。「光散乱媒質のこのような特徴は、内部の物体を隠すために使える。この新しい隠れ蓑は、割に簡単な構造になっている」と論文の筆頭著者、ロバート・シットニー氏は説明している。
 実験では、シットニー氏は拡張光源を使って幅数センチメートルのPlexiglasタンクを背後から照射した。タンクは白い混濁液で満たされている。内部の物体は、タンクの壁に目に見える影を投じている。試験物体として簡単な金属筒、直径数センチの球を使用した。それらを隠すために、まず光が拡散的に反射されるように物体に白色の分散塗料をコーティングした。光が物体を回避するように、研究チームは透明なシリコン材料PDMSでできた薄い覆い(シェル)をつけた。シェルには、ある濃度の光散乱メラミン微粒子を加えた。シリコン/メラミン・シェルによって周囲よりも拡散が迅速になり、光は物体を回避した。こうして、物体はもはや影を投じなくなった。「影の消滅は、隠れ蓑の成功を示している」。
マーティン・ウェゲナー氏によると、空気中での理想的な隠れ蓑は欠点を持っている。同氏は、KITの応用物理学研究所、ナノテクノロジー研究所の研究者。「隠れ蓑は、光速の上限を規定するアインシュタインの相対性理論に反する。拡散媒質の中では、光が何度も散乱するので、光の実効速度は遅くなる。ここでは理想的な隠れ蓑が実現できる」と同氏は説明している。