コヒレント特設ページはこちら

Science/Research 詳細

HZDR、6G THz無線を実現する新材料、金被覆グラフェンを開発

January, 14, 2021, Dresden--Helmholtz-Zentrum Dresden-Rossendorf (HZDR)の研究チームは、テラヘルツ波を変換、生成する新しい材料系を開発している。

テラヘルツ光は、将来技術に大きな可能性をもつが、特に高速モバイル通信接続やワイヤレスネットワークを可能にすることで5Gを継承するかも知れない。ギガヘルツからテラヘルツ周波数への移行のボトルネックは、不十分な光源とコンバータによるものだった。ドイツ-スペインの研究チームは、HZDRと協力して、テラヘルツパルスを以前よりも効果的に生成する材料を開発した。これは、金属ラメラ構造で被覆した超薄カーボンシート、グラフェンをベースにしている。研究成果は、ACS Nanoに発表された。

しばらく前に、HZDR加速器BLBEで研究している専門技術チームが、グラフェンが周波数逓倍器として機能することを示すことができた。2Dカーボンは、低THz周波数範囲の光パルスで照射されると、より高い周波数に変換される。これまで、問題は、そのようなTHzパルスを効率的に生成するためには非常に強い入力信号が必要だったこと。そのような入力信号は本格的な粒子加速器でしか生成できない。「これは、将来の技術応用には明らかに非実用的だ」とHZDR(Institute of Radiation Physics)のJan-Christoph Deinertは説明している。「だからわれわれは、遙かに低い入力、低電界強度で機能する材料系を探した」。

この目的で研究チームは、新たな考えに到達した。つまり、周波数変換は、グラフェンを微小な金ラメラで被覆することで大幅に増強可能である。金ラメラは、素晴らしい特性をもっている。「それは、グラフェンに入ってくるテラヘルツ照射を大幅に増幅するアンテナのように機能する。その結果、ラメラの間に入れたグラフェンで強力な電界が得られる。これによりわれわれは非常に効率的なテラヘルツパルスを生成できる」とプロジェクト調整役、ICN2のKlaas-Jan Tielrooijは説明している。

驚くほど効果的な周波数逓倍
その考えをテストするためにICN2のチームメンバーがサンプルを作製した。まず、ガラスキャリアにグラフェン単層を適用。上に、酸化アルミニウムの超薄絶縁層を蒸着、その後に金ストリップ格子が続く。これらのサンプルは、ドレスデン-ローゼンドルフのTELBEテラヘルツファシリティに運ばれ、低テラヘルツ域(0.3~0.7 THz)の光パルスが照射された。このプロセス中、専門家は特別なディテクタを使って、金ラメラ被覆のグラフェンが、入射光周波数をどの程度効果的に逓倍するかを分析した。

Sergey Kovalevは「非常に良好だった」とレポートしている。「未処理のグラフェンと比較すると、周波数逓倍信号の生成には、非常に弱い入力信号で十分であった」。数字では、周波数逓倍を観察するには、元々必要とされていた電界強度の1/10で十分だった。技術的に関連する低電界強度では、変換されたTHzパルスのパワーは、新材料計により、1000倍を超える強さである。個々のラメラが広くなり、触れるままになるグラフェン領域が小さくなればなるほど、その現象はますます強くなる。最初、専門家は、入力周波数を3倍にすることができた。後に、さらに大きな効果、4倍、7倍、9倍増を達成した。

チップ技術への適合性
これは、非常に興味深い展望を示している。これまで研究者は、THz波生成に加速器、大型レーザなど、大きくて複雑なデバイスを必要としていた。その新材料により、GHzからTHzへの飛躍は、電気入力信号、つまり遙かに小さな力で達成可能かもしれない。「われわれのグラフェンベースのメタマテリアルは、現在の半導体技術に完全に適合している。原理的に、それは通常のチップに集積可能である」とDeinertは強調している。チームは、その新しいプロセスの実行可能性を証明した。今度は、特殊アセンブリ実装が可能になるかも知れない。

潜在的なアプリケーションは広範である。THz波は、現在使用されているGHzモバイル通信周波数よりも高い周波数であるので、非常に多くのワイヤレスデータ伝送に使える。5Gが6Gになる。しかし、THz領域は、他の分野でも関心が高い。例を挙げれば、産業の品質制御や空港のセキュリティスキャナから、材料研究における非常に幅広い科学的アプリケーションまでである。
(詳細は、https://www.hzdr.de)