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グラフェンディテクタでTHz光の偏光を明らかに

December, 14, 2020, Moscow--MIPT研究チームは、グラフェンベースでテラヘルツ放射のブロードバンドディテクタを作製した。そのデバイスの潜在的なアプリケーションは、通信、次世代情報伝送システム、セキュリティ、医療装置。研究成果は、ACS Nano Lettersに発表された。

その新しいディテクタは、プラズマ波の干渉に依存している。そのような干渉は、多くの技術応用、日々の現象の根底にあり、楽器の音を決めたり、シャボン玉のレインボーカラーの原因となるなど、他にも多くの効果がある。電磁波干渉か、物体の化学組成、物理的および他の特性を判定するために使われる。これには、極めて遠隔の物体、星や銀河も含まれる。

金属や半導体のプラズマは、最近、研究者の注目の的になっている。より身近な音響波のように、プラズマに生ずる波は、本質的に密度波でもあるが、電子やホールなど、電荷をともなう。その局所密度変動から電界が生じ、物質を伝搬すると他の電荷に作用する。これは、音波の圧力勾配が、非常に広い領域で気体粒子、液体粒子を動かす仕方と似ている。しかし、プラズマ波は、従来の導体の中では急速に弱まる。

とは言うものの、2D導体ではプラズマ波は、減衰することなく比較的長い距離を伝搬する。したがって、その干渉を観察することが可能になり、問題の物質の電子的特性について多くの情報が得られる。2D材料のプラズモニクスは、物性物理学の非常に動的な領域として出現している。

過去10年、グラフェンベースデバイスにおいて研究者はTHz放射検出で、大きく前進した。研究者は、テラヘルツ波とグラフェンの相互作用のメカニズムを調べ、プロトタイプディテクタを作製した。その特性は、他の材料をベースにした同様のデバイスの特性に匹敵するものである。

とは言え、これまでのところ、研究は、テラヘルツ波とディテクタの相互作用の細部には注目していなかった。とはいうものの、波の偏光に敏感なデバイスは、多くのアプリケーションに用途がある。ここでは、ディテクタの反応が、入射光の偏光にどのように依存しているかを実験的に証明した。

MIPTカーボン材料研究所のYakov Matyushkinは、以下のようにコメントしている。
「ディテクタの構成は、4×4mmのシリコンウエファ、2×5µmの小さなグラフェンピース。グラフェンは、金製の2つのフラットコンタクトパッドに接続されており、そのボータイ形状によりディテクタは、偏光および入射光の偏光と位相に感度がある。それ以外に、グラフェン層は上のもう一つの金コンタクトに接触するが、それらの間には酸化アルミニウムの非導電層がある」。

マイクロエレクトロニクスでは、この構造は電界効果トランジスタとして知られている。両サイドは、通常ソースとドレインと言われており、トップコンタクトはゲートである。

テラヘルツ放射は、マイクロ波と遠赤外光の間の狭帯域電磁スペクトルである。アプリケーション視点では、テラヘルツ波の重要な特徴は、生細胞を透過して部分吸収されるが、電離は起こさず、したがって人体に害はない。この点は、THz放射がX線とは区別されるところである。

したがって、従来考えられていたTHz波のアプリケーションは、医療診断、セキュリティスクリーニングである。THzディテクタは、天文学にも利用される。別の新しいアプリケーションは、THz周波数でのデータ伝送。新しいディテクタが、5G、6G次世代通信基準確立に役立つ。

「THz放射は、実験サンプルに、その表面に対して直角に向けると、そのサンプルで光起電力が生ずる、これは、ディテクタの金コンタクトを介して外部の計測デバイスで検出可能である。ここで重要なことは、検出された信号の性質は何かということである。それは実際、多様である。多くの外的および内的パラメタに依存してそれは変化する。サンプルの形状、周波数、放射偏光やパワー、温度など」とGeorgy Fedorovはコメントしている。

特に、新しいディテクタは、すでに産業製造されている種類のグラフェンに依存している。グラフェンは2タイプある。材料は機械的に剥離されるか、化学気相法(CVD)により合成されるかのいずれかである。前者のタイプの方が高品質、欠陥と不純物が少なく、電荷移動度記録を保持している。この点は、半導体では極めて重要な特性。しかし、今日すでに産業がスケーラブルに製造できるのはCVDグラフェンであり、量産デバイスに選択すべき材料である。

(詳細は、https://mipt.ru)