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EPFL、赤外放射を高感度検出する新方法

September, 30, 2020, Lausanne--EPFL物理学者は、優れた感度で赤外放射を検出する新方法を提案している。これにより光の単一量子の信号のように低い信号の検出が可能になる。

われわれのウエブカムあるいは携帯電話カメラを使うとき、過去数10年で電磁スペクトルの可視域のために開発された安価でコンパクトなセンサの途方もない能力を経験する。それに対して、人の眼には見えないもっと低い周波数の放射は、複雑で高価な装置を必要とする。コンパクトな技術がないことが、分子の検出用センサ、われわれの身体から自然に放出される熱放射のイメージングへの幅広いアクセスを妨げている。この分野の新しい発想の転換は、われわれの日常生活に途方もない影響を及ぼす可能性がある。

中赤外および遠赤外放射を検出する現在利用可能な最も一般的な技術は、ボロメータである。これは、放射吸収によって生ずる熱を計測する小さな温度計アレイで構成されている。それらには多くの制約がある。特に、反応が遅く、弱い放射レベルを検出できない。

Christophe GallandとTobias KippenbergをリーダーとするEPFLチームが提案した新しいアプローチは、全く異なるルートをたどる。まず、不可視光を可視光に変換し、次にそれを既存技術で検出する。新しいコンセプトのコアには、ハイブリッド金属分子ナノ構造がある。金属は、赤外放射を分子に集光するように調整されている、それにより分子は振動させられる。次に、振動する分子のエネルギーが再び放射に変換されるが、今度はもっと高い周波数、つまり可視光域である。そのハイブリッドナノ構造は、Diego Martin-Cano (Max-Planck Institute for Light, ドイツ、エアランゲン)が設計したもので、高い変換効率を可能にし、同時にデバイスサイズを赤外光の波長よりも大幅に小さくする。

研究の主筆、Philippe Roelliは、かれらの構想から描ける様々な概念的進歩の中で、最も魅力的な側面は、その潜在的な感度であると強調している。「変換プロセス中に加わった低レベルのノイズが、室温で極めて弱い信号の検出を可能にする。先進的なデバイスでは、量子限定変換への到達が見込め、赤外光の単一量子の信号を解明する比類のない機会が得られる」。

EPFLの研究は、表面科学、ナノテクノロジー、量子オプティクスで今後の研究を誘発し、赤外センシングやイメージングにアプリケーションを持つ新しいデバイスの開発を助長することになる。

(詳細は、https://actu.epfl.ch)