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NIMS、二次元層状物質を使った光多値メモリを開発

August, 27, 2020, つくば--NIMSは、光と電圧の二つの入力値で複数の値を記録できる多値メモリ素子を開発した。この成果は、記録容量の大幅な向上に寄与するだけでなく、光と電子を繋いださまざまな素子に発展することが期待される。

研究グループでは二次元層状物質を積層したトランジスタ型のメモリ素子を開発した。半導体の二硫化レニウム(ReS2) がトランジスタチャネル、絶縁体の六方晶窒化ホウ素(h-BN)がトンネル絶縁層、グラフェンがフローティングゲートとして機能し、従来のフラッシュメモリと同様に、フローティングゲートに電荷を蓄積することにより情報を記録する。ReS2は、光で電子と正孔の対を励起させやすく、その数も光の強度で制御可能。この電子をグラフェン内の正孔と再結合させることで、グラフェン内の電荷量を段階的に減少させることに成功した。その結果、光と電圧を使い分けながら、電荷の保持量を効率よく多段階に制御した多値メモリの動作を実証できた。さらに主要材料がすべて二次元層状物質であるため、界面が原子レベルで平坦となりリーク電流が低減され省電力化が可能。

この成果は、記録密度の向上や素子の省電力化に寄与するだけでなく、光と電圧を使い分けて電荷の保持量を制御する仕組みを応用し、光ロジック回路や超高感度光センサなど様々な展開が期待できる。

研究は、国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 量子デバイス工学グループの若山裕グループリーダーおよびBablu Mukherjeeポスドク研究員と中払周主幹研究員の研究チームによって、科研費特別研究員奨励費「二次元原子層膜を使った超高感度光センサーの開発」の一環として行われた。

研究成果はAdvanced Functional Materialsオンライン掲載された。

(詳細は、https://www.nims.go.jp)