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ストレインオプトロニクス、フォトン制御の新方法

August, 12, 2020, Washington--ジョージワシントン大学の研究チームは、シリコンフォトニックプラットフォーム上の2D材料を引き伸ばすすことでオプトエレクトロニクスデバイスを改良する新しい方法を発見した。研究チームは、これをストレインオプトロニクスと呼んでいる。

GW教授Volker Sorgrをリーダーする研究チームは、ナノシリコンフォトニック導波路に巻き付いた2D材料が新しいフォトディテクタとなることを実証した。これは、技術的に重要な波長1550nmで高効率で動作可能である。

そのような新しいフォトディテクタは、将来の通信およびコンピュータシステムを進歩させる、特にマシンラーニングや人工ニューラルネットワークなどの新しい領域に進歩をもたらす。

「われわれはフォトディテクタを作る新しい方法を見つけただけでなく、オプトエレクトロニックデバイスの新たな設計方法、われわれがストレインオプトロニクスと名付けた方法を発見した。これらのデバイスは、光データ通信、マシンラーニングやAIで使用される新しいフォトニック人工ニューラルネットワークに向けた固有の特徴をもっている」と電気・コンピュータ工学准教授、Dr. Sorgerは説明している。

論文“Strain-Engineered High Responsivity MoTe2 Photodetector for Silicon Photonic Integrated Circuits,”は、Nature Photonicsに発表された。

増え続ける現代社会のデータ需要は、光ドメインのデータ信号のより効率的な変換を必要としている。ファイバオプティックインターネットから電子デバイス、スマートフォンやラップトップへの変換である。光から電気信号へのこの変換プロセスは、光ネットワークの重要な構成要素、フォトディテクタによって行われる。

2D材料は化学的、技術的にフォトディテクタに関連する特性を持つ。その強力な光吸収のために、2D材料ベースのフォトディテクタ設計が光変換改善を可能にし、より効率的なデータ伝送と通信を可能にする。

しかし、2D半導体材料、遷移金属、二カルコゲン化合物ファミリの材料などはは、これまで通信波長での効率的な動作はできなかった。光バンドギャップが大きく、低吸収のためである。

ストレインオプトロニクスは、この欠点に対するソリューションを提供し、研究者が2D材料の電気、光学特性を改良するエンジニアリングツールとなり、こうして先駆的な2D材料ベースのフォトディテクタが実現する。

ストレインオプトロニクスの潜在性を明確に理解するために研究チームはモリブデンテルライド超薄層、2D材料半導体をシリコンフォトニック導波路上に延ばし、新しいフォトディテクタをアセンブルした。

次に、新たに作製されたストレインオプトロニクス「コントロールノブ」を使って、その物理特性を変えて電子的バンドギャップを縮小し、デバイスが近赤外波長で動作するようにした。つまり1550nm 付近の通信(Cバンド)関連波長である。

研究チームは、その発見の興味深い一側面に注目している。この半導体2D材料がもつ歪量は、既定の歪量では、バルク材料と比較すると著しく高い。

チームは、これら新しい2D材料ベースのフォトディテクタは、グラフェンを使う他のフォトディテクタと比べて1000倍高感度であることに注目している。そのような極限感度のフォトディテクタは、データ通信アプリケーションだけでなく、医療センシングや、量子情報通信でさえ有用である。

「興味深いことに、バルク材料と違い、2D材料は、歪エンジニアリングには特に有望な候補である。それらが、破壊する前にもっと大きな歪量に耐えられるからである。近い将来、われわれは歪を多くの他の2D材料に適用したい。フォトニックデバイスを最適化する無限の可能性を見出したいと考えている」とポスドクフェロー、Rishi Maitiはコメントしている。

(詳細は、https://gwtoday.gwu.edu)