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格子状に並んだナノサイズの穴を持つ薄い膜がらせんの光波長を変える

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July, 31, 2020, 東京--東京大学大学院理学系研究科の小西邦昭助教、五神真教授(現総長)らは、人が目で見える光として感じる波長の円偏光を、真空紫外領域の短い波長の円偏光に直接変換できる物質を探索し、等しい間隔で並んだ正方形の格子の位置にナノサイズの穴を開けた薄い膜が利用できることを初めて発見した。波長が変換された真空紫外の円偏光は、十分な強度で分光などの用途に利用できることも分かった。

このようなナノ構造を持つ薄膜はフォトニック結晶と呼ばれ、光の伝わり方を制御するための研究が行われてきた。正方形の格子状に穴の開いたフォトニック結晶を、真空紫外領域への変換に使うという新しい発想は、真空紫外の円偏光を簡単に作り出すことを可能とし、医学、生命科学、分子化学、磁性材料などの材料科学といったさまざまな分野において、機能性分子や機能材料を発見するのに役立つ分析技術につながることが期待される。

開発した手法の概要
今回、研究チームは、可視光領域の円偏光フェムト秒レーザ光を、簡便に真空紫外領域の円偏光に変換する手法を開発することに成功した。

この手法では、ナノメンブレンに4回回転対称性を導入するために、正方格子状に周期的な穴を作製した。
今回開発した手法では、豊橋技術科学大学の石田誠名誉教授、赤井大輔助教(研究当時)らの作製した、シリコン基板上の厚さ48nmのエピタキシャルγ-Al2O3薄膜を用いた。

 この薄膜に対して、MEMS及び微細加工の専門家である東京大学の三田吉郎准教授とともに、最先端微細加工装置を駆使して、直径190nmの穴が周期600nmで正方格子状に開けられたフォトニック結晶ナノメンブレンを作製した。

作製したフォトニック結晶ナノメンブレンの大きさは300μm四方。このフォトニック結晶構造の共鳴波長である波長470nmの円偏光フェムト秒レーザ(パルス幅100fs、繰り返し周波数1kHz)を入射し、波長157nmの真空紫外領域での第3次高調波を観測することに成功した。さらに、その偏光状態を調べ、ほぼ入射偏光と逆回りの円偏光の状態となっていることが明らかになった。

これは、右回り円偏光を入射すると左回り円偏光の真空紫外光に変換され、一方、左回り円偏光を入射すると、右回り円偏光の真空紫外光に変換されることを示している。また、これらの実験結果は、数値計算シミュレーションによっても再現することに成功した。
 この手法で発生した真空紫外コヒーレント円偏光のフォトン数は、1パルスあたり約105個であり、分光への実応用が期待される強度を達成できていることがわかった。

研究成果は、Opticaに発表された。
論文タイトル
Circularly polarized vacuum ultraviolet coherent light generation using a square lattice photonic crystal nanomembrane