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MIT、新しいグラフェンシート作製法

May, 29, 2014, Cambridge--グラフェンは、新種の電子デバイスなどの材料として有望視されていることから、世界中の研究者が新たなアプリケーションを目指してこの材料を研究している。しかし、この強靱で軽量、伝導性の高い材料を広く採用する上で最大の障害の1つが、産業レベルで製造することの難しさである。
 原子スケールメッシュで、わずか1原子厚の炭素材料で最初にする作業は、微小フレーク(破片)の利用に依存している。これは一般にグラファイトブロックから粘着テープを素早く剥がすことで得られる。産業レベルの製造には役に立たないローテクシステムだ。それ以後、関心は金属箔状にグラフェン膜を形成することに移ったが、研究者は金属箔から使える基板にグラフェンを移すところで困難に直面した。
 現在、MITとミシガン大学の研究グループは、グラフェンを直接大きなシートガラスのような材料の上に作製する生産方法を考案した。この工程は拡張できる。
 現在、ほとんどのグラフェン作製法は、まずニッケルや銅のような金属膜上に材料を成長させる。「それを使えるようにするには、金属からそれを剥がしてシリコンウエハ、ポリマシート、あるいはガラスシートなどのより大きな基板に着けなければならない。しかし、それを移す工程は、グラフェンそのものを成長させる工程よりもさらに思い通りに行くことはなく、グラフェンを傷つけたり汚したりすることになる」とMitsui Career Development機械工学助教、A. John Hart氏は説明している。
 新しい方法では、まだテンプレートとして金属膜を使うが、グラフェンを金属膜の上だけに作製するのではなく、膜の上と下の両方にグラフェンを造る。この場合の基板は、ガラス形状の二酸化ケイ素で、その上にニッケル膜を載せている。
 ニッケル膜上にCVDでグラフェン層を堆積すると、グラフェンは「ニッケル層の上と下にできる」とHart氏は言う。次に、ニッケル膜は剥がすことができ、非金属基板上にグラフェンだけが残る。
 この方法では、所望の基板にグラフェンを貼り付ける別の工程は不要になる。それがディスプレイスクリーン用の大きな板ガラスでも、薄くて柔軟な材料でもよい。
 今回の開発は、大手ガラスメーカー、Guardian Industriesと協力して行った。同社は現在、フロート法を採用している。工場では、ガラスは分速数メートルの速度で流れており、毎日数100トンのガラスが製造されている。「ガラス基板上に直接グラフェンを生産する拡張性のある製造工程を開発する必要性からひらめいた」とHart氏は言う。
 同氏によると、現在の研究で使ったよりももっと低い温度でグラフェンが合成できるなら、このアプローチは、シリコンウエハ上のICなど、小さなスケールにも使える。
 「この新しいプロセスは、ニッケルフィルムの構造に合わせたグラフェンの成長を理解することをベースにしている。われわれはこのメカニズムが機能することを示した。今度は、ハイパフォーマンスグラフェンコーティングを生産するのに必要な特性改善が問題となる」とHart氏はコメントしている。

画像: 非金属基板上に直接グラフェンを造る新しい工程