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Science/Research 詳細

ITMO、初の化学合成光スイッチ動作を実証

June, 17, 2020, St. Petersburg--現在、世界中の研究者は、光スイッチを実現する研究に取り組んでいる。このデバイスにより、光を使ってバイナリコードで情報を伝送することができ、将来、超高速光メモリセルの開発にも役立つ。
 ITMO大学の研究チームは、フェムト秒レーザを使い、試験管で合成し、ガス吸収用に通常化学で利用されている、有機金属構造体をベースにした全光スイッチの実現法を実証した。研究成果は、Angewndte Chemieに発表された。

主要な結果を得るために馴染みのあるものを新たな角度で見る必要があることが科学ではよく起こる。例えば、研究者は何年も前から今日まで有機金属構造体(MOFs)を研究してきた。これは、結晶格子物質と有機化合物の特性を組み合わせたある種の機能材料である。結晶格子物質からは特定の構造、有機化合物からは多数の化学結合を継承している。化学結合により様々な化学反応に入ることができ、触媒として働いたり、ガスを吸収したりできる。

しかし、ある点で、研究チームは焦点を科学だけでなく、そのような複合材料の光学特性にも拡大した。特殊な、光学的活性(フォトクロミック)有機分子をその構造に加えると、それらは光と多様な相互作用をするようになる。レーザを照射すると、その分子は配置を変え、不透明になる。この特性は異性化と呼ばれている。しかし、このプロセスが比較的長い時間に、数分から数日の期間に起こると、そのようなMOF結晶の実用的なアプリケーションが使用不可能になる。

光のスイッチを切るためのレーザ
 論文の基礎をなす考えは、ITMO、物理学・工学部、Valentin Milichkoをリーダーとするロシア-フランス研究室から出た。その後、国際グループが、特殊なMOFsではなく、ごくありふれた以前から化学産業で使われている有機金属構造体の光学特性を処理できるかどうかの試験を決めた。

ITMO大学研究者、Nikita Kulachenkovは、「圧力、温度、その他の外部刺激で構造を変える特性を証明するMOFsグループを使うことを決めた。これらの有機金属構造体の中にはHKUST-1がある。これはガス吸収分野では非常に研究が進んでいるが、その特性が、結果的にその構造が光に晒されると大きく変わることを誰も考えたことはなかった」と言う。

HKUST-1有機金属構造体の実験は、赤外超短パルスレーザによりこのMOFが光の透過が少なくなることを示した。

「そのMOFを透過するフォトンの数が、100倍程度減少した。切替え時間は数10ミリ秒。これは,既存のMOFベース有機システムと比べて2~3桁優れている」とNikita Kulachenkovは話している。

物理学的には、この変化は次のような説明になる。赤外レーザによって生成されるフェムト秒インパクトは、有機金属構造体から水を蒸発させるに十分である。これによりMOFは、レーザ放射光で透明度が少なくなっていく。しかし光のスイッチを切ると、その構造体は、空気から再び水を吸収し、最初の状態に戻る。

「われわれの論文では、例えば、、結晶を水中に置いた時、湿度の上昇でスイッチング効果が著しく速く起こることを証明している」とNikita Kulachenkovは付け加えている。 

光ロジックへの道
研究チームが光透過で実験しているのは単なる好奇心からではない。世界中の物理学者、エンジニア、プログラマは、いわゆる光メモリ素子の展望について語ることが多くなってきている。これらは、電子の動きをベースにして情報処理する現在のデバイスを置き換える。光で動作するコンピューティング素子は、スピードが速く、効率的で、最も重要なことは,省エネである。しかし、この大胆な計画を現実にするには、数多くの理論的、光学的問題を解決しなければならない、その一つが信頼度の高い,省エネ、ローコスト光制御である。

(詳細は、https://news.itmo.ru)