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2D材料でできた高速光ディテクタ

June, 4, 2020, Zurich--ETH-Zurich研究グループは、新しい光ディテクタを開発した。それはシリコン光導波路に結合された異なる材料の2D層で構成されている。将来、このアプローチは、LEDsや光変調器作製にも利用できる。

光の高速、高効率変調器は、ディテクタとともに、光ファイバケーブルでデータ伝送するためのコア部品である。近年、既存の光学材料をベースにした通信向けのそのような構成要素が絶えず改善されているが、さらなる改善はますます難しくなっている。ETH-Zurichの研究グループが示したように、それは異なるものの特殊化の統合された力を必要としているからである。

ドイツの研究グループとNIMS(日本)の研究者が協力して、極めて高速、高感度光ディテクタを開発した。これらは、新しい2D材料とナノフォトニック光導波路の相互作用に基づいている。研究成果は、Nature Nanotechnology.に発表された。

二次元材料
「われわれのディテクタでは、異なる材料の利点を活用し、一方で個々の制限を克服したかった。そのためのベストな方法は、各々が数原子厚の異なる材料から、一種の人工結晶、つまりヘテロ構造を造ることである。さらに、われわれは、実用的なアプリケーションにとってそのような2D材料が正当化されるかどうかも知りたかった」とNovotny of the Institute for PhotonicsのPh.D学生Nikolaus Flöryは話している。

グラフェンのような2D材料では、電子は、3Dではなく平面を動くだけである。これは、例えば電圧が印加されたとき、その伝送特性を著しく変える。グラフェンはオプティクス応用には適切な選択肢ではない。遷移金属の複合物、モリブデンあるいはタングステン、カルコゲナイド、硫黄あるいはテルライト(TMDC)は感光性が高く、その上、シリコン光導波路との結合が容易にできる。

異なるアプローチの相互作用
導波路と高速オプトエレクトロニクスの専門家は、Jürg Leutholdグループから来ている。同グループのシニアサイエンティスト、Ping Maは、新しいディテクタを可能にしたのは2つのアプローチ間の相互作用であると主張している。「2D材料と光がディテクタに流れ込む導波路の両方を理解することは、われわれの成功にとって根本的な重要事項である。同時に、われわれは2D材料が特にシリコン導波路との結合に適していることを確認した。われわれのグループの専門性は、完璧に相互補完的である」と同氏は話している。

研究チームは、普通は遅いTMDCベースディテクタを高速にする方法を見つけなければならなかった。他方で、そのディテクタは、その高速性能を犠牲にすることなく、インタフェースとして用いられるシリコン構造と適切に結合されなければならなかった。

垂直構造によるスピード
「われわれは、TMDC(われわれの場合はモリブデンジテルリド)とグラフェンによる垂直ヘテロ構造を実現することでスピード問題を解決した」とFlöryは話している。従来のディテクタとは違い、入力光粒子で励起された電子は、:計測される前に最初に材料の大半を進む必要はない。そうではなく、TMDCの2D層は、電子が短時間に上方か下方のいずれかに確実に材料を離れることができるようにしている。

電子が離れるのが速ければ速いほど、ディテクタの帯域はますます大きくなる。帯域は、どの周波数で光パルスにエンコードされたデータが受信できるかを示している。「われわれは、新しい技術で数GHzを見込んでいた。最終的に、実際、われわれは、50GHzを達成した」とFlöryは話している。これまで、TMDCベースのディテクタで可能だったのはGHz以下の帯域だった。

一方、最適光結合は、ディテクタをナノフォトニック光導波路に集積することで達成された。いわゆるエバネセント波、導波路から横方向に突き出す波は、グラフェン層(これは低電気抵抗)を通してフォトンをヘテロ構造のモリブデン・ジテルリド層に供給する。

そこで、光粒子は、電子を励起し、最終的に電流として検出される。集積導波路設計は、十分な光がそのプロセスで確実に吸収されるようになっている。

多くの可能性を持つ技術
ETH研究チームは、導波路とヘテロ構造のこの組合せで、光ディテクタだけでなく、他の光素子、光変調器、LEDsやレーザも造れると確信している。「可能性はほぼ無限である」と研究チームは言う。「われわれは、この技術でできるものの一例としてフォトディテクタを取り上げたに過ぎない」。

近い将来、研究チームは、その研究成果を使い、他の2D材利用を研究する予定である。これまで、それらのうち100程度は分かっている。それらは、新しいヘテロ構造で無限の可能な組合せを実現する。また、そのデバイスの性能をさらに改善するために、例えばプラズモンなど、他の物理的効果を活用する予定である。
(詳細は、https://ethz.ch)