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DESY、ロングパルスを利用カスケードTHz加速器の概念実証

May, 15, 2020, Hamburg--ドイツ電子シンクロトロン研究所(DESY)研究チームは、微小なダブル粒子加速器を構築した。これは、システムに供給されるレーザエネルギーを再利用して、加速された電子のエネルギーを再び強化することができる。デバイスは、電磁スペクトルの赤外とRFの間にあるナローバンドテラヘルツ(THz)放射を利用する。単一加速チューブは、長さがわず1.5㎝、直径0.79mm。DESYの自由電子レーザ科学センタ(CFEL)のDongfang Zhangは、Physical Review Xで実験加速器を紹介した。

デバイスの微小サイズは、THz放射の短波長により可能になる。「THzベース加速器は、次世代のコンパクト電子源の有望な候補として登場している。しかし、その技術はまだ初期段階であり、実験THz加速器の性能は、THzパルスと電子との間の相対的に短い相互作用セクションにより制限されている」とFranz Kärtnerは説明している。同氏は、DESYのリードサイエンティスト、デバイスを構築したCFELのグループ長。研究チームは、以前にTHz加速器の実験を成功させた。これにより、巨大な粒子加速器は、実用的でもなく、必要なくなる。

その新しいデバイスでは、研究チームは、THz波のマルチサイクルで構成される長いパルスを利用した。マルチサイクルパルスは、粒子の相互作用セクションを拡張する。「われわれはマルチサイクルTHzパルスを誘電体材料と腹合わせになっている導波路に入れる。このスキームは、THzパルスと電子バンチ間の相互作用域をセンチメートル範囲に増やす。初期の実験では数ミリメートルだった」とZhangは、説明している。

そのデバイスは、ラボで大きな加速を生み出さないが、チームは、導波路で電子がエネルギーを得ることを示し、そのコンセプトを実証した。「それは概念実証である。電子のエネルギーは、55kVから約56.5kVに増加した。THzパルスを生成する、より強力なレーザを使うことで強力な加速が可能になる」とZhangは話している。

セットアップは、主に非相対論的レジーム向けに設計されている。つまり電子は、光の速度にそれほど近くないスピードである。興味深いことに、このレジームにより、加速の第2段でTHzパルスの再利用が可能になる。「THzパルスが導波路を離れ、真空に入ると、その速度は光の速度にリセットされる。つまり、パルスが数センチで、遅い電子バンチに追いつく。われわれは、適切な距離に第2導波路を設置した。電子がTHzパルスとともにそれに入り、その導波路によって再び減速する。こうして、われわれは第2の相互作用セクションを作り、電子のエネルギーをさらに増加させる」とZhangは説明している。

ラボ実験では、この方法で、THzパルスのわずかな部分しか再利用できなかった。しかし実験は、再利用が原理的に可能であることを示している。再利用される部分は大幅に増やせるとZhangは考えている。CFELグループ、プロジェクトリーダー、、シニアサイエンティスト、Nicholas Matlisは、「われわれのカスケードスキームは、非相対論的レジームで電子加速向けに必要なレーザシステムに対する要求を大幅に低下させ、THzベース加速器の設計に新たな可能性を開く」とコメントしている。

(詳細は、https://www.desy.de)