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THzデータネットワークの「リンクディスカバリー」問題を解決

May, 8, 2020, Providence--ブラウン大学とライス大学の研究チームは、将来の超高速テラヘルツデータネットワークでデバイスが互いを見つける際に役立つ方法を実証した。

誰かがラップトップを開くと、直ぐにルータがそれを発見し、ローカルWi-Fiネットワークに接続できる。その能力がリンクディスカバリとして知られるワイヤレスネットワークの基本要素。今回、研究チームは、テラヘルツ(THz)放射でそれを行う手段を開発した。THzは、いずれ超高速ワイヤレスデータ伝送を実現できる高周波である。

テラヘルツ波は、周波数が高いために、今日利用されているマイクロ波の数100倍のデータを伝送できる。しかし、その高周波の意味するところは、THz波がマイクロ波とは違う伝搬のしかたであるということだ。マイクロ波は、光源から全方向に出るが、THz波はナロービームで伝搬する。

ブラウン大学工学部教授Daniel Mittlemanは、「ルータ、つまりアクセスポイントが、クライアント機器のある場所をどのように見つけるかが問題の1つにある。これは、ビームで狙いをつけるためである。ここで考えているのは、そういうことだ」と話している。

Nature Communicationsに発表された論文では、研究グループは、リーキー(漏洩)導波路として知られるデバイスをテラヘルツ周波数で、リンクディスカバリに利用できることを示した。そのアプローチでは、リンクディスカバリは、パッシブに、1回で可能になる。

リーキー導波路の概念は単純である。それは単純な2つの金属プレートであり、間に放射が伝搬できる空間がある。プレートの一方に狭いスリットが切ってあり、これにより微小放射が漏れ出る。この新しい研究は、そのデバイスがリンクディスカバリに使用でき、基本特性の1つを生かすことでトラッキングにも利用できる、すなわち、多様な周波数が、多様な角度でそのスリットから漏れ出ることを示している。

「幅広いTHz周波数を単一パルスでこの導波路に入力すると、各々が違った角度で同時に漏出する」とライス大学院生、研究の共著者、Yasaman Ghasempourは話している。「虹が漏れ出るように考えることができる、個々の色が角度に応じた固有のスペクトルシグネチャを表している」。

アクセスポイントにリーキー導波路を設置する場合を考える。クライアント機器が、アクセスポイントに対してどこにあるかにしたがい、導波路から出る違う色を見る。クライアントは、アクセスポイントに、「イエローを見ました」と信号を返すだけである。アクセスポイントは、クライアントがある場所を正確に知っており、そのトラッキングを続けることができる。

「リンクディスカバリは1回ではない。実際、伝送方向は、クライアントが動くに従い連続的に調整される必要がある。われわれの技術では、超高速適応が可能である。これはシームレスな接続のカギである」と同氏は説明している。

セットアップは、クライアント側でもリーキー導波路を使用する。そこでは、導波路のスリットを通して受信した広い周波数を使い、デバイスの局所的回転(ラップトップを使いながら椅子を回転するような時)に対してルータの位置を確定する。

Mittlemanによると、マイクロ波のリンクディスカバリ用既存プロトコルは、THz信号では機能しないので、THz領域でリンクディスカバリを機能させる新しい方法の発見は、重要である。標準マイクロ波よりも指向性の強い5Gネットワークの急増に備えて開発されたプロトコルでさえTHzには実用的ではない。それは5Gビーム同様に狭いからである。5Gビームは、THzネットワークのビームより、10倍程度広い。

「5Gは幾分指向性があるので、この問題は解決されていると考える人々がいるが、5Gソリューションは全く拡張性がない。全く新しいアイデアが必要とされている。これは、THzネットワーク構築開始に必要な基本的プロトコルの1つである」と同氏は話している。
(詳細は、https://www.brown.edu/)