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量子の世界を見る超高速顕微鏡

March, 30, 2020, Stuttgart--微小な電子コンポーネント、分子内で起こるプロセスを現在、数100アト秒の分解能で個々の原子までイメージングできる。

未来のコンピュータのコンポーネント動作を現在、HD品質映像かできる。シュトットガルト、マックスプランク、固体研究所(Max Planck Institute for Solid State Research)のManish Garg と Klaus Kernは、量子スケールで起こる超高速プロセスのための顕微鏡を開発した。この顕微鏡は、量子世界のための一種のHDカメラであり、電子の動きを個々の原子まで正確に追跡することができる。したがって、例えば超高速、極微小電子コンポーネントの開発では、有益な洞察が可能になる。

量子世界で起こっているプロセスは、最も経験を積んだ物理学者にとっても課題である。例えば、ますます強力になっていくコンピュータやスマートフォンのコンポーネント内部で起こっていることは、極めて迅速であるばかりか、これまでにない小さな空間内で起きている。これらのプセスを分析し、トランジスタを最適化するとなると、例えば、電子のビデオは,物理学者には極めて有益である。これを達成するために,研究者は高速カメラを必要とする。これは、わずか数百アト秒でこの「電子ビデオ」の各フレームを露光するカメラである。アト秒では、光は、水分子の長さしか移動できない。何年も前から物理学者は、アト秒カメラとして非常に短いレーザパルスを利用してきた。

しかし、過去においてては、アト秒画像は、本質的にぼやけた背景に電子のスナップショットしか見せなかった。今回、Klaus KernとManish Gargの研究により、研究者は、撮影した電子が個々の原子まで突き止めるところを正確に特定することができた。

超短レーザパルスと走査型トンネル顕微鏡との統合
このために、二人の物理学者は、走査型トンネル顕微鏡(STM)と連動させた超短レーザパルスを利用する。STMは、それ自体が単一原子でできた先端で表面を走査することで原子スケール分解能を達成する。先端と表面との間の電子トネリング、実際に電子が十分なエネルギーを持っていないとしても電子はその間の空間を超える。このトネリングプロセスの効果は、電子が移動しなければならない距離に強く依存しているので、それは先端とサンプルの間の空間を計測するために利用できる。したがって、表面上の個々の原子や分子でさえそれを利用して描写できる。しかし、今日まで、STMは、電子を追跡できるだけの時間的分解能を達成していなかった。

「STMと超短パルスを組み合わせることで、それぞれの欠点を補完するために2つの方法の利点を利用することは容易であった」とManish Gargは言う。研究チームは、原子精度で位置決めされた顕微鏡先端で、これら光の極短パルスを放出してトーネリングプロセスを始動させる。その結果、量子世界のためのこの高速カメラは、今ではHD解像度を達成できる。

光波エレクトロニクスへの道を開く
 その新技術で、研究チームは、特定の時間に電子がどこに存在するかを個々の原子まで、数百アト秒の精度で計測することができる。例えば、これは、高エネルギー光パルスによって電子が打ち出された分子で利用できるので、残った負電荷キャリアが自己再配置し、その分子を、他の分子と化学反応させることができる。「化学反応を理解するには、分子内の電子をライブ撮影することは、その自然の空間と時間スケールで、重要である。例えば、電子、イオンなど、荷電粒子内の光エネルギーの変換である」とKaus Kernは言う。

さらに、その技術により研究者は未来のプロセッサやチップを通して電子の経路を追跡できるだけでなく、荷電キャリアの飛躍的な加速を引き起こすことができる。「今日のコンピュータでは、電子は、数十億Hzの周波数で振動している。超短光パルスを使うと、その周波数を1兆Hzで振動させることができる」(Klaus Kern)。光波のこのターボブーストにより研究者は、光波エレクトロニクスへの道を開く。これは、現在のコンピュータよりも数100万倍高速である。したがって、超高速顕微鏡は、量子世界のプロセスを撮影だけでなく、これらのプロセスと干渉することで、監督(ディレクタ)としても機能するのである。
(詳細は、https://www.mpg.de)