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極紫外分光技術を使いリアルタイムで量子干渉を観察

March, 27, 2020, Freiburg--アルベルト・ルートヴィヒ大学フライブルク(Albert-Ludwigs-Universität Freiburg)物理学研究所のDr. Frank Stienkemeier と Dr. Lukas Bruderをリーダーとするチームは、希ガス原子の原子殻にある電子のリアルタイム超高速量子干渉(振動パタン)の観察に成功した。
 研究チームは、約150アト秒の周期で振動を観察することができた。この目的にのためにチームは、特別に用意したレーザパルスで希ガス原子を励起した。次に、原子や分子の量子力学効果を極めて高い時間分解能で調べることができる新しい計測技術で原子の反応を追跡した。研究成果は、Nature Communicationsに発表された。

分子の結合を壊すような多くの化学反応は、光吸収がトリガーになる。吸収後、最初の瞬間に原子殻の電子分布が変わり、後続の反応に大きく影響する。この変化は、極めて短時間に起こる。タイムスケールはアト秒範囲である。以前に利用した分光技術は、可視光レーザパルスを使用しているが、そのプロセスを追跡できるほど速くない。したがって世界中の研究者は現在、UVやX線範囲の画期的なレーザ光源と適切な分光技術の開発を行っている。

Stienkemeierのチームは、可視光スペクトル範囲から知られている技術、コヒレントポンププローブ分光法をUV範囲に広げた。これは、X線放射とUV光の間のスペクトル領域。これを行うために研究チームは、イタリア、TriesteのFERMI自由電子レーザでEUVに一連の2つの超短パルスレーザを用意した。パルスは、精密に定義された時間間隔で分離され、精密に定義された相互位相関係となっていた。最初のパルスが電子殻でプロセスをスタートさせる(ポンププロセス)。2番目のパルスが、後のポイント(プローブプロセス)で、電子殻の状態をプローブする。時間間隔と位相関係を変えることで、研究チームは電子殻の時間的推移について結論を得ることができた。「最大の課題は、パルス特性の精密制御の達成と弱い信号の分離だった」と実験手順の担当者、Andreas Wituschekはコメントしている。

フライブルクの物理学者は、特に希ガスアルゴンを調べた。アルゴンではポンプパルスが、原子殻内の2つの電子の特殊な構成の原因となる。この構成が崩壊し、非常に短時間に1つの電子が原子を離れ、最終的に原子はイオンとしてて後に残る。研究者は、1つの電子が原子を離れるとともに、量子干渉の即時の時間減衰観察に初めて成功した。「この実験は、EUV範囲の高エネルギー照射により選択的に刺激した後の原子と分子のプロセスの研究で多くの新しいアプリケーションへ道を開く」とBruderは話している。

(詳細は、https://www.pr.uni-freiburg.de/pm-en/)