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血糖値モニタには非侵襲的分光学、針は過去のもの

March, 2, 2020, Cambridge--糖尿病患者は、1日に何回も血糖値をテストして、血糖値が高すぎず、低すぎないことを確かめなければならない。調査によると、患者の半分以上は、十分にテストしていない。針で刺すことの痛さと不便さのためである。

可能な代替の一つがラマン分光法である。これは、非侵襲的技術であり、近赤外(NIR)光を照射することで皮膚など、組織の化学成分を明らかにする。MITの研究チームは、この技術を患者が利用できるように実用化することにに取り組んでいる。皮膚を通して直接グルコース濃度の計測にそれが使えることを研究チームは示した。これまでは、ラマン信号と、血糖値のリファレンス計測との間の比較に基づいて血糖値は、間接的に計算される必要があった。

その技術をユーザフレンドリーなデバイスにするにはさらなる取り組みが必要だが、この進歩は、連続的グルコースモニタリング用のラマンベースセンサが実行可能であることを示している、とMITの生体・機械工学教授、Peter Soはコメントしている。

皮膚を通して見る
ラマン分光法は、近赤外光の散乱、屈折の仕方を分析することで組織の化学成分同定に利用できる。これは、NIRが異なる種類の分子を照射するからである。

MITのレーザバイオメディカルリサーチセンタはは、20年以上ラマン分光ベースグルコースセンサに取り組んでいる。ラマン分光に利用されるNIRレーザビームは、組織内にはわずか数mmしか浸透しないので、一つの重要な進歩は、皮膚細胞を覆う、間質液として知られる液体からグルコース計測を血糖値に関連付ける方法の考案であった。

とは言え、別の重要な障害が残っていた。グリルコースにより生成される信号は、皮膚に見つかる多くの他の組織成分にかき消される傾向がある。

Kangによると、グルコースは信号全体の中の微量であるので、これまでは計測された信号から実際にグルコース信号を見ることはできかなった。

それを回避するためにMITのチームは、皮膚サンプルからのラマンデータと、同時に採った血液サンプル内のグルコース濃度とを比較することで間接的に血糖値を計算する方法を開発した。しかし、このアプローチは、頻繁なキャリブレーションを必要とし、被験者の動き、あるいは環境条件の変化が予測を誤らせる。

新しい研究では、チームはグルコース信号を直接見させる新たなアプローチを開発した。その技術の新しい側面は、近赤外光を約60°の角度で皮膚に照射するが、結果としてのラマン信号は皮膚に垂直なファイバから収集する点にある。これにより信号全体が強くなる。皮膚表面からの不要な反射信号が除去され、グルコースラマン信号が収集できるからである。

研究チームは、豚でそのシステムをテストし、10~15分のキャリブレーション後、最大一時間、正確なグルコース読み取りができることを確認した。チームは、それを血液サンプルから採ったグルコース計測と比較することで、その読み取りを検証した。

Soによると、多くの進んだ計算も信号抽出もなしで、経皮的に組織からグルコース信号を直接観察したのは初めてである。

連続モニタリング
研究チームによると、ラマンベースのシステムが糖尿病患者の人々のモニタに使用できるまでには、その技術はさらなる開発が必要である。チームは、デスクトップのプリンタサイズにデバイスを縮小し、可搬にすることを計画している。

最終的には、連続グルコース計測ができるウェアラブルモニタを研究者は考えている。
(詳細は、http://news.mit.edu)