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分子スケールで化学的性質を計測するナノスコープを開発

May, 20, 2014, Berkeley--最高の顕微鏡や分光計でも、10~1000nmサイズの領域で分子を調べたり特定したりすることが困難だったが、米国エネルギー省(DOE)のローレンスバークリー国立研究所の先端光源(ALS)シンクロトロンの広帯域赤外光の助けを借りて、研究グループは、これまでにない感度と範囲でこの領域の内部を見る広帯域イメージング技術を開発した。
 原子間力顕微鏡と赤外シンクロトロン光源を組み合わせることでバークリー研究所とコロラド大学の研究グループは赤外分光の空間分解能を桁違いに改善した。同時にその全スペクトラル域をカバーしており、これまでは研究が困難であったナノスケール、メソスケール、表面現象など多様な研究が可能になった。
 この新しい技術は、シンクロトロン赤外ナノ分光(SINS)と呼ばれ、これにより複雑な分子システムを詳細に調べることができるようになる。
 「大切なことは、100倍から1000倍小さなスケールでフルブロードバンド赤外分光が実現されるということだ」とバークリーラボの次席科学エンジニアリング、Hans Bechtel氏はコメントしている。
 SINSは、2つの赤外技術、赤外散乱近接場光学顕微鏡(IR s-SNOM)とFTIRとを組み合わせている。これら2つと、バークリーラボのシンクロトロンの強い赤外光とを組み合わせることで、20~40nmの分子群を特定することができる。
 赤外分光はバルクサンプルでしか使えない。従来の赤外分光は2000nm以下の分子組成を分解することができない。大きな障害となっているのは光の回折限界、これは光の最小焦点を決める基本的な制限であり、特に赤外光の波長は大きいので問題になる。最近では、回折限界はs-SNOMと言う技術で克服できるようになっている。これは金属先端で輝く光を必要とする。先端は、光に対してアンテナのように作用し、光を数10nmの先端、その微小領域に導く。
 この技術がIR s-SNOMで使われている。ここでは赤外光が金属先端に結合している。しかし、IR s-SNOMの課題はレーザで生成する赤外光に研究者が依存していることだった。レーザはこの技術が必要とするフォトンをたくさん放出するが、動作波長域が狭いので、分子振動の狭い領域しかプローブできない。言い換えると、レーザでは混合分子のスペクトラルを調べるだけの柔軟性がない。
 研究チームは、レーザの限界を克服するためにバークリーラボのALSを使用する機会を得た。同研究所のシンクロトロンは、ハイフォトンカウント、広帯域赤外光を生成し、回折限界に焦点を絞ることができる。研究グループは、シンクロトロン光と、先端が約20nmの金属チップとを連結し、赤外ビームを試料に集中する。得られたスペクトラムを改良したFTIRで解析する。
 コロラド大学のMarkus Raschke氏によると、シンクロトロンの光を走査型プローブ顕微鏡と結びつけたのは極めて稀な例の1つである。
(詳細は、www.lbl.gov)