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THzガス分析の感度を大幅に改善

December, 5, 2019, Washington--フランス、ULCOの研究者によると、新しい進歩は、テラヘルツ波を使った化学分析を行う高解像度分光計の感度向上を約束する。この感度向上は、多くのアプリケーションに恩恵をもたらす。産業排出にある複合ガス混合気、患者の呼気の病気バイオマーカーの検出など。また、ガス検出により、食品損傷検出の新しい方法にもつながる。
 Opticaで、リトラル・コート・ドパール大学(Université du Littoral-Côte-d’Opale)のGaël Mouretをリーダーとする研究チームは、テラヘルツ周波数用に新しい高性能光学キャビティを報告した。チームは、このキャビティを使い、テラヘルツ周波数による確証的なキャビティ強化分光学を実証した。
 テラヘルツ周波数は、電磁スペクトルのマイクロ波と赤外光の間にある。分光学分析では、テラヘルツガス分析はは、サンプルの分子を区別し、幅広い分子の検出能力を改善する。しかし、この周波数を十分に活用するために必要な技術は、まだ開発途上である。
 「いくつかの研究がテラヘルツ周波数を使って、大気中に放出された産業ガスを分析したが、それらはすべて感度不足に阻まれている。われわれの新しい光学キャビティは、テラヘルツ気相分光で特定できる分子のタイプを拡大し、実行可能な検出レベルを改善する」と研究チームのFrancis Hindleは話している。

感度向上
 研究チームは、新たに利用可能になったコンポーネントを使い、高フィネステラヘルツ光学キャビティを作った。これは、ミラーと導波路の配置で、何度も反射するように光を閉じ込める。高フィネス光学キャビティは、光損失が極めて低く、光はミラーの間を既存キャビティよりも多く跳ね返る。その新コンポーネントには、低損失円形コルゲート導波路と2つの高反射率フォトニックミラーが含まれており、テラヘルツ周波数でうまく機能するように設計されている。
 キャビティ強化分光法では、混合ガスは、内部の光と相互作用するように光学キャビティ内に入れられる。その新キャビティによりテラヘルツ波は、出力するまでに約3000回、前後に反射される。分析される分子は、わずか50㎝長の共振器内で、約1kmの有効距離でテラヘルツ周波数と相互作用することになる。テラヘルツ波が跳ね回るので、存在するどんな分子にも何度もテラヘルツ波が吸収され、非常に高感度計測が可能になる。
 「このフィネスのキャビティは、以前にはTHz周波数で利用できなかった。この進歩により、テラヘルツ周波数は、すでに赤外で利用されている多くの高感度技術に適用される」とHindleはコメントしている。
稀な分子の検出
新しいデバイスでキャビティ強化ガス分光法を実証するために、研究チームは、大気中に自然に存在する硫化カルボニルガスのサンプルを分析した。ガスサンプルは、硫化カルボニルの多くの同位体を含んでいたが、チームは50000分子あたりわずか1分子濃度で存在する極めて稀な同位体を計測することができた。サンプル内の種々の化学的同位体の比率計測は、汚染物質源の確定に利用できる。
 研究チームは、より多くの複合分子や混合物の分析に利用できるように、その分光計の周波数範囲を拡大する計画である。
 「われわれの研究は、高フィネステラヘルツキャビティを容易に構築できることを示している。また、高分解能でガス計測に使えることも示している。これは、環境から産業汚染、医療までのアプリケーションで微量に存在する多種のガスのモニタリング改善に貢献するものである」とHindleはコメントしている。