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EPFL、電子デバイスの未来を形作るエキシトン

November, 22, 2019, Lausanne--エキシトンは、励起された電子状態から生まれる準粒子であり、スイス連邦工科大学(EPFL)チームの研究によると、われわれの日常的デバイスのエネルギー効率を高める可能性を持つ。
 それは、エレクトロニクスについての全く新しい考え方である。エキシトン、擬粒子は電子が光を吸収する時に形成され、回路の構成要素を変革しようとしている。EPFLの研究チームは、より効率的な電子システムを設計するために通常とは異なるエキシトンの特性を研究してきた。今回、半導体内を動くエキシトンの制御性を高める方法を確認した。研究成果は、Nature Nanotechnologyに発表された。
 擬粒子は、固体物質内の2つの粒子間の相互作用から生ずる一時的な現象である。エキシトンは、電子がフォトンを吸収するときに作られ、より高いエネルギー状態に移動し、それの前のエネルギー状態(バンド理論で、価電子帯)にホールを残す。電子と電子ホールは、引力によって結合し、その2つが、いわゆるエキシトンを形成する。エキシトンがホールに落ちると、それはフォトンを放出し、エキシトンは消滅する。
 昨年、EPFLのナノスケールエレクトロニクスと構造研究所(LANES)の研究チームは、電子ではなく、エキシトンで走るトランジスタの開発を発表した。初めて、室温で機能するトランジスタを実現できた。この技術は、実用的なアプリケーション開発へ向けての大きな一歩である。
 エキシトンの持続時間を長くするために研究チームは、2つの異なる2D材料を相互に重ねた。二セレン化タングステン(WSe2)と二セレン化モリブデン(MoSe2)である。結果として得られた材料は、擬粒子の分布の仕方に影響を与える、かすかに光る構造だった。「これら2つの材料で、エキシトンは、特定の場所に集まり、電流の流れを阻止する傾向があった」とLANES長、Andras Kisは説明している。それが起こるのを阻止するために今回、研究チームは、六方晶系型窒化ホウ素(h-BN)中間層を加えた、これによりエキシトンとそのエネルギーレベルがより明確に見えるようになった。
 研究チームは、エキシトン電流を分極する方法も発見した。すなわち、擬粒子は、最終的には、電流量の変動とその極性により独立にデータをエンコードするために使える。それは、ナノレベルで、コーディングとデータ処理の両方に、もっと多くのアプリケーションを可能にする。
(詳細は、https://news.epfl.ch)