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シリコン単電子素子で量子的な超高速コヒーレント振動観察

November, 6, 2019, 東京--日本電信電話株式会社(NTT)は、韓国Korea Advanced Institute of Science and Technology(KAIST)と英国National Physical Laboratory(NPL)と共同で、シリコントランジスタ中の電子が従う量子力学的な性質を組み合わせることにより、現在のエレクトロニクスの限界を超えるサブテラヘルツの周波数で電子1個を往復させ、その動きを捉えることに初めて成功した。
 今回の成果は、量子的な現象の検出速度向上を意味するとともに、電子1個の量子的な性質に着目した新しい用途、すなわち超高速駆動が可能な量子ビットや高感度電磁場センサ※3などへの応用が期待される。
 これまでNTTでは、シリコントランジスタで形成した微細な箱への電子1個の出し入れを時間的に調節し、精度の高い電流標準※4の実現に取り組んできた。このいわゆる単電子転送素子では電子の粒子としての性質のみを利用していた。一方で、量子力学によれば電子は波動としての性質も有しており、単電子転送素子における電子の波動的な振舞いとその応用には理論的な興味がもたれていた。とりわけ1個の電子がエネルギーのわずかに異なる二つの波動の状態に跨って存在するとき、電子はポテンシャルの箱の中を超高速で往復運動することが予想され、この効果は量子コヒーレント振動と呼ばれていた。
 しかし単電子転送素子における量子コヒーレント振動の周波数は100ギガヘルツの数倍にも及び、既存のエレクトロニクスに基づく計測手法ではこれを実測することが原理的に叶わず研究の進展を阻んでいた。
 今回の国際的な共同研究では、全く新しい測定原理に基づく計測手法を確立し、電子1個のサブテラヘルツにおよぶ超高速コヒーレント振動の時間依存性を初めて観測することに成功した。この新手法では、エネルギーを時間的に掃引しながら箱の中で電子を往復させ、壁の近傍で特定のエネルギーに達したときに限って、壁の中に設けたシリコン中の共鳴エネルギー準位を介して トンネル効果によって外に出るように工夫した。これを利用し、振動開始から電子が外に出るまでの経過時間を変化させることで、振動の周期に関する情報を得られた。

今後の展開
 超高速なコヒーレント振動の検出手法を用いて、超高速駆動が可能な量子ビットの可能性を検討する。また、電子を用いた量子光学(光の量子力学的性質に関する研究分野)の実験や、電子の量子的な性質を利用した高感度電磁場センサへの応用も検討する。さらに、このコヒーレント振動検出を利用して、高速単電子転送の機構をより詳細に探究することで、電流標準へ向けた単電子転送の高速高精度化への検討も行う。

 研究成果は、Nature Nanotechnologyオンライン版で公開される。

(詳細は、https://www.ntt.co.jp/)