All about Photonics

Science/Research 詳細

ETH-Zurich、オンチップ赤外分光計

image.imageformat.fullwidth.612300368

October, 18, 2019, Zurich--ETH-Zurichの研究チームは、コンパクトな赤外分光計を開発した。それはコンピュータチップ上に収まるサイズであるが、宇宙や日常生活で、興味深い可能性を開くとされている。
 現在、モバイルフォーンでほとんど何でもできるようになっている。写真やビデオの撮影、メッセージ送信、現在地の確認、もちろん電話通話もできる。この多彩な機器を用いると、ビールのアルコール含有量、果物の成熟度さえ確認できる。
 一見、化学分析にモバイルフォーンを使う考えは大胆に見える。所詮、今日、そのような分析に使用される赤外分光計は一般に、数キログラムの重量であり、ハンドヘルドデバイスに組み込むことは困難である。現在、チューリッヒ工科大学(ETH-Zurich)の研究チームは、この考えの実現に向けて重要な一歩を踏み出した。物理学部光学ナノ材料教授、Rachel Grangeをグループ長として、David PohlとMarc Reig Escaléが、他の研究者と協力し2平方センチメートルのチップを開発した。それを利用することで、従来の分光計と同様に、赤外光を分析することができる。

ミラーの代わりに導波路
従来の分光計は、入力光を2つのパスに分け、それを2つのミラーで反射させる。反射された光ビームは再結合され、フォトディテクタで計測される。ミラーの一つを動かすと干渉縞が生じ、これを使って入力信号の様々な波長の比率を確定できる。化学物質は、赤外スペクトルで特性に差が出るので、研究者は結果として得られるパタンを使って、テストサンプルにどんな物質がどんな濃度で存在するかを特定できる。
 同じ原理は、ETH研究チームが開発したミニ分光計の背後にもある。とは言え、そのデバイスでは、入射光は可動ミラーの助けを借りて分析するほどに長くはない。代わりに、電界で外的に調整可能な光学屈折率で、特殊な導波路を利用する。「屈折率を変えることは、ミラーを動かす際に起こることと同様の効果を持つ。したがって、このセットアップによりわれわれは、同じように入射光のスペクトルを分光できる」とPohlは説明している。

構造化プロセス
導波路がどのように設定されるかにしたがって、研究者は光スペクトルの多様な部分を検査できる。「理論的には、われわれの分光計により、赤外光だけでなく、可視光も計測できる。ただし導波路が適切に設定されていれば」とEscaléは言う。光スペクトルの狭い領域しかカバーできない他の集積分光計と対照的に、研究グループが開発したデバイスは、広い範囲のスペクトルを容易に分析できるという大きな優位性を持つ。
 そのコンパクトなサイズと並んで、ETH研究者のイノベーションは、2つの利点を提供する。「チップ上の分光計」は、キャリブレーションは一回だけでよい。従来の分光計は繰り返し繰り返し再キャリブレーションを必要としている。また、可動部分が存在しないので、メンテナンスはほとんど必要ない。
 その分光計には、ETH研究者は、通信業界の変調器としても使用されている材料を用いた。この材料は、多くのプラスの特性を持つが、導波路としては、光をその内部に閉じ込める。これは理想的とは言えない。光の一部が外に出ることでのみ、計測が可能になる。このため、研究チームは、光がデバイスの外部に散乱するように、導波路に精巧な金属構造を取り付けた。「望み通りにその材料を構造化するまでにクリーンルームで大変な作業が必要だった」とGreangeは説明している。
 現状のミニ分光計を実際にモバイルデバイス、他の電子デバイスに組み込み可能にするまでに、まだいくらかの技術的進歩がある。「現状、われわれは外部カメラで信号を計測している。もしコンパクトなデバイスがあれば、これを同じように組み込まなければならない」(Grange)。
 研究者の最初の狙いは、化学分析ではなく、全く違うアプリケーションだった。天文学では、赤外分光計は、遠くの天体について貴重な情報を提供する。地球の大気は、大量の赤外光を吸収するので、こうした計測器を人工衛星、宇宙望遠鏡に設置することは理想的である。比較的安価に宇宙に打ち上げることができる、コンパクトで軽量、安定計測デバイスは、当然のことながら、大きな利点になる。
(詳細は、https://ethz.ch/)