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近赤外光で脳神経細胞の遺伝子を操作するアップコンバージョン分子技術開発

October, 7, 2019, 福岡--九州大学大学院工学研究院(佐々木陽一大学院生、楊井伸浩准教授、君塚信夫教授)と東京医科歯科大学統合研究機構(押川未央共同研究員、味岡逸樹准教授)の研究グループは、東京大学の佐藤守俊教授、群馬大学の林(高木)朗子教授らとの共同研究により、水中で近赤外光から青色光へTTA-UCを示すヒドロゲルの開発に初めて成功した。
 感情と行動の関係性など高次脳機能の仕組みを解くために、生体透過性の高い近赤外光(低いエネルギーを持つ光)を青色光(高いエネルギーを持つ光)にフォトン・アップコンバージョン (UC)させ、生体深部で遺伝子操作できる技術の開発が期待されている。特に、三重項-三重項消滅 (TTA)と呼ばれる分子間の三重項エネルギー移動に基づく TTA-UC機構は、比較的弱い光でも駆動しうるため生体を傷つけずに遺伝子操作できるという利点があるが、これまで水中において近赤外光を青色光に変換するための有効な方法論がなかった。
 九州大学のグループが近年開発した基底一重項状態から励起三重項状態への直接遷移 (S-T 吸収) を経る三重項増感法を基盤とし、三重項増感剤に適切なアクセプター分子を連結する分子設計に基づいて励起三重項を長寿命化した結果、粘度の高いヒドロゲル中において近赤外―青TTA-UCを初めて実現した。さらに、発生した青色光をオプトジェネティクスへと応用することによって遺伝子機能を時空間的に操作し、神経細胞の形態を制御することにも成功した。今回新たに開発したアップコンバージョン分子技術を発展させ、生体(ネズミやサルなどの動物個体)脳深部の神経細胞を遺伝子操作することによって、高次脳機能の解明への貢献が期待される。
 研究成果は、Angewandte Chemie International Editionにオンライン掲載された。

(詳細は、http://www.kyushu-u.ac.jp/)