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EPFL、オンチップ・マイクロ共振器内の光の結晶を制御

September, 19, 2019, Lausanne--EPFL研究チームは、光学オンチップマイクロ共振器内部の光が、周期的パルストレインの形でどのように結晶化されるかを示した。パルストレインは、光通信リンク性能を強化し、超高速LiDARにサブミクロン精度を提供する。
 光マイクロ共振器は、レーザ光を、共振器周囲を周回する超短パルスに変換する。これらのパルスは、「散逸的カー(Kerr)ソリトン」と呼ばれ、その形状を維持しながらマイクロ共振器内を伝搬できる。
 ソリトンがマイクロ共振器を出るとき、出力光はパルストレイとなる、つまり固定間隔の一連の繰り返しパルスである。この場合、パルスの繰り返しレートは、マイクロ共振器のサイズによって決まる。より小さなサイズは、高繰り返しレートのパルストレインを可能にし、周波数100GHzに達する。これらを使って、光通信リンクの性能を高めることができ、サブミクロン精度の超高速LiDARのコア技術にもなる。
 それは素晴らしいが、この技術はいわゆる「光ベンディングロス(曲げ損失)」に悩まされる、そのパスにおける構造的曲げによって起こる光損失である。ファイバオプティクスではよく知られた問題である。光ベンディングロスは、マイクロ共振器のサイズが、数10µm以下にできないことを意味する。したがって、これがパルスで達成できる最大繰り返しレートを制約する。
 Nature Physicsに発表された論文でEPFLのTobias J. Kippenbergラボの研究チームは、単一マイクロ共振器でマルチソリトンを生成することで、この制約を回避し、パルス繰り返しレートをマイクロ共振器のサイズから分離する方法を見いだした。
 研究チームは、正確に等間隔で、可能な最大数の散逸的カーソリトンをマイクロ共振器にシードする方法を発見した。この新しい光形成は、結晶性固体における原子鎖への光学的類似と考えられる。したがってチームは、それらを「完全ソリトン結晶」(PSC)と呼ぶ。
 干渉的強化と高い光パルス数により、PSCは、結果としてのパルストレインのパフォーマンスを首尾一貫して拡大する、繰り返しレートだけでなくそのパワーも強める。
 研究チームは、PSC形成の動力学も研究した。その高度に組織化された構造にもかかわらず、PCSs形成は光カオスと深いつながりがあるようだ。光カオスとは、光マイクロ共振器における光の不安定性によって起こる現象であり、半導体ベースやファイバレーザシステムでは一般的である。
 「われわれの研究成果は、通常のマイクロ共振器を用いて数THzの超高繰り返しレートの光パルストレイン生成を可能にする」とMaxim Karpovは言う。「これらは、多くのアプリケーションで利用できる。例えば分光学、測距、チップサイズのフットプリントの低雑音THz放射光源として利用できる」。一方、光マイクロ共振器のソリトン動力学の新たな理解、PSCの挙動は、非線形システムにおけるソリトンアンサンブルの基礎物理学への新たな道を開くことになる。