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自然界で最小の励起エネルギーをもつ原子核状態の人工的生成に成功

September, 17, 2019, つくば--自然界には約3300種以上の原子核が存在するが、この中で最小の励起エネルギーをもつ原子核がトリウム229。この励起状態(アイソマー状態)は、レーザを用いて励起することができる唯一の原子核励起状態であり、これとレーザを組み合わせることにより超精密時計(”原子核時計”)を実現することが可能となる。またトリウム229は宇宙膨張の謎の解明など、基礎物理研究の舞台(プラットフォーム)としても有益であると予想されている。
 トリウム229アイソマー状態に関する研究は40年以上にわたる歴史を持つが、大まかなエネルギー準位はわかっているものの、いまだレーザ励起には成功していない。困難な理由の一つが、この状態の生成方法にあった。すなわち、これまではウランからの放射線に伴う複雑な崩壊を利用する以外にその生成手段が存在しなかった。
 岡山大学、産業技術総合研究所(産総研)、理化学研究所、大阪大学、京都大学、東北大学、ウィーン工科大学(TU Wien)、高輝度光科学研究センター(JASRI)の共同研究グループは、世界で初めてアイソマー状態を人工的に生成することに成功した。この方法は大型放射光施設(SPring-8)の高輝度X線を用いるもので、放射線の少ないクリーンな環境下でアイソマー状態を自在に生成できるという利点がある。これによりアイソマー状態の研究が進展し、原子核時計の実現に向けて大きく前進するものと期待される。
 研究成果はNatureオンライン版に掲載された。
(詳細は、https://www.aist.go.jp/ https://www.tuwien.at/en/)