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ニュートンのグラスプリズムに取って代わるナノワイヤ

September, 13, 2019, Cambridge--ケンブリッジ大学の研究チームは、顕微鏡なしで細胞を撮像、スマートフォンカメラ内で化学フィンガープリント分析を可能にする超微小なデバイスを設計した。
 そのデバイスは、人の髪の毛よりも1000倍小さく、これまでに設計された最小の分光計である。潜在的アプリケーションには、食品鮮度、薬剤の品質の評価、偽造製品の同定さえある。これらすべてがスマートフォンカメラで可能になる。研究成果は、Scienceに掲載されている。
 17世紀にアイザック・ニュートンが、プリズムにより光が分かれるのを観察して、光と物質の相互作用を研究する新しい科学分野にタネをまいた、つまり分光学である。今日、光学分光計は産業、ほぼすべての科学研究で重要ツールである。光の特性を分析することで分光計によりわれわれは、何百万光年遠くの銀河系星雲内のプロセスついて、またタンパク質分子の特性まで知ることができる。
 しかし今でもなお、、分光計の大半はニュートンがそのプリズムで証明したのと同じ原理に基づいている。光を空間的に分離し、種々のスペクトル成分に分ける。そのような分光計は大きくて複雑であり、コイン以下のサイズに縮小することが難しい
 ニュートンから400年後、ケンブリッジ大学の研究者がこの課題を克服し、これまでに報告されたものよりも1000倍小さなシステムを実現した。
 ケンブリッジのチームは、他のUK、中国、フィンランドの研究者とともにナノワイヤを利用した。材料組成は、その長さに従い変化するので、可視スペクトルのさまざまな色に対応させることが可能である。コンピュータチップ製造で使用されるのと同じ技術を使い、チームはこのナノワイヤに一連の光応答セクションを作製した。
 「われわれは、プリズムのような分散素子を排除できるナノワイヤを設計した、これにより従来の分光計と比べてはるかにシンプルで小型化されたシステムを作ることができた」とケンブリッジグラフェンセンタのZongyin Yang、論文の筆頭著者は話している。「そのナノワイヤセクションが取得する個々の応答は、直接コンピュータアルゴリズに供給して、入射光スペクトルを再構成する」。
 「写真を撮る時、ピクセルに蓄積される情報は一般に3つの成分、赤、緑、青に限られる。われわれのデバイスでは、すべてのピクセルが可視光全域からのデータポイントを含む。したがって、人の目が知覚できる色をはるかに上回る詳細情報を入手できる。これにより、例えば画像フレームで起こっている化学プロセスについても知ることができる」。
 研究リーダー、Dr Tawfique Hasanは、「われわれのアプローチにより、分光計デバイスの前例のない微小化が可能になる。スマートフォンに直接組み込み、ラボからわれわれの掌まで、強力な分析技術が実現する」と説明している。
 ナノワイヤの最も有望な利用可能性の1つは生物学である。そのデバイスは非常に小さいので、顕微鏡なしで単一の細胞を直接イメージングできる。また、他のバイオイメージング技術と違い、ナノワイヤ分光計で取得した情報は、各ピクセルの化学的フィンガープリントの詳細な分析を含んでいる。
 研究チームは、実現したプラットフォームが、UVから赤外域まで使えるまったく新しい世代の超コンパクト分光計になると考えている。そのような技術は、コンシューマ、研究、産業アプリケーションの幅広い範囲で利用できる。これには、lab-on-a-chipシステム、生体インプラント、スマートウエアラブルデバイスも含まれる。
 チームは、特許申請を行っており、実際のアプリケーションは5年以内に実現される。