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スマートフォンカメラによる科学研究をキャリブレーション法で改善

September, 12, 2019, Bailrigg--スマートフォンと他のコンシューマカメラが科学アプリケーションにますます使われるようになっているが、様々なデバイスからのデータを比較、統合することは難しい。新しい使いやすい標準方法により、ほとんどだれでも、特殊な装置なしでこれらのカメラを較正でき、アマチュア、科学学生、プロの研究者がコンシューマカメラで役立つデータを取得することができるようになる。
 「ローコストのコンシューマカメラは、大規模導入、自律モニタリング、市民科学に関わるプロジェクトに最適である。われわれの基準キャリブレーション法により、だれでもコンシューマカメラを使って空気中のアエロゾル粒子を検出することで公害計測などが簡単にできるようになる」とオランダのライデン大学研究チーム、Olivier Burggraaffはコメントしている。
 研究成果は、Optics Expressに発表されている。研究者の多重研究グループは、新しい標準的キャリブレーション法とデータベース、SPECTACL(標準写真機器較正技術とCatalogueE)を報告している。これは、スマートフォン、デジタルシングルレンズレフ型カメラやドローン搭載カメラで使える。データベースは、他のものが使えるように、ユーザーがキャリブレーションデータをそれぞれのカメラからアップロードすることを可能にしている。
 「SPECTACLは、多くのDIY法を含んでいる。われわれの確認したところでは、これはハイエンドのラボ装置を必要とするプロの方法に匹敵する結果を提供する」とBurggraaffはコメントしている。

アマチュア科学の改善
 標準的キャリブレーション法は、Burggraaffや同氏の同僚が、iSPEX (Spectropolarimeter for Planetary EXploration)というスマートフォンアドオンを使って光で水質を計測するアマチュア科学法を開発していて生じた必要性に応えて開発した。このアドオンによりスマートフォンカメラは、ハイパースペクトルデータや偏向データなど追加の光学情報を計測できる。SPECTACLとiSPEXはMONOCLE (Multiscale Observation Networks for Optical monitoring of Coastal waters, Lakes and Estuaries)の一部である。これは、EUが助成するプロジェクトで、光学式水質計測のための持続的なソリューション創設を目的にしている。
 「水質計測にスマートフォンカメラを使うには、そのようなカメラを十分に理解する必要がある。各メーカーや個々の機器が固有の特性を持つからである」とBurggraaffは言う。「SPECTACLは、多くの既存キャリブレーション法を統合し、それらを初めてコンシューマカメラに適用する。これにより、他の開発者やわれわれにとって、これらのカメラを科学目的で使用することが非常に容易になる」。
 コンシューマカメラのためのキャリブレーション法は以前に開発されたが、そのソフトウエアにアクセスできないこと、その機器についての情報が利用できないことがネックになっていることが多かった。例えば、最近まで、カメラセンサから(RAW dataとして知られる)データに直接アクセスできなかった、また焦点、露光などのカメラの多くの設定をコントロールできなかった。しかし、iOSとAndroidの新バージョンは両方ともできる。
 「SPECTACLの一部として、両方のOSのためにフレームワークを開発している。RAWデータを使って計測し、これらを電話で処理するためである。数年前には、全くできなかったことである」とBurggraaffは話している。

DIY vs. ラボの方法
 新しいキャリブレーション法をテストするために研究チームは、複数のカメラを使って、それらを確立した方法と比較した。例えば、レンズがセンサにどのように光を分布するか、つまりフラットフィールディング計測のDIY法は、標準法からの結果の5%以内に一致する。標準法は、実験室セットアップで積分球を必要とする。DIY法は、カメラにテーピングペーパーを巻き太陽あるいはコンピータスクリーンの画像を撮る。
 研究チームは、iSPEX取付のスマートフォンカメラのスペクトル応答曲線もテストし、高価で扱いにくいモノクロメータを必要とするプロの計測法の4%以内の結果を得ることができた。シングルカメラのキャリブレーションは、モノクロメータでは半日かかるが、DIY法は、1枚のプリンタペーパーの単画像を陽光で撮るだけであった。
 「われわれは多くのカメラをテストし、それらの間の興味深い相違点と類似点を確認した。例えば、光の異なる波長へのカメラの反応、スペクトル応答曲線は、いくつかの機器を除いてほとんどのカメラで極めて類似している。全く同じシーンを撮像している時でさえ、カメラが感知して色を再現する方法に影響を与える差を示すデバイスがいくつか存在する」とBurggraaffは言う。
 研究チームは、データベースを埋め、カメラ特性をより広く考えるために、SPECTACLE法を多くのカメラに適用することを計画している。これは、研究者だけでなく、そのキャリブレーションデータをデータベースにアップロードしたいと考えている人なら誰でもできる。チームは、ISPEXスマートフォンアドオンの開発を続け、水や空気の汚染計測取得能力を改善する。これには、様々なスマートフォンからのデータを統合するために、SPECTACLE法とデータベースを使い、物理的な設計と、そのデータから化学的結果を取り出すアルゴリズムを進歩させる必要がある。