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非侵襲的イメージング法、分子レベルでガンを発見

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September, 6, 2019, Washington--Tufts UniversityとLahey Hospitalの研究チームは初めて、強力な顕微鏡技術と自動画像分析アルゴリズムを統合し、侵襲的な生検や造影剤に頼ることなく、健全な組織と転移性ガン組織とを区別した。
 この新しいアプローチは、いずれ医師が、手術中に標準的なイメージング技術で見ることが困難なガン転移を検出する際に役立つ。
 「既存技術は非常に有益であるが、空間分解能が低く、外因的造影剤の利用が必要になることが多い。この研究で用いる方法は、完全なラベルフリーな方法で細胞や組織の特徴を顕微鏡レベルで特定する、本質的にナイフのない生検のようである」とTufts University、論文の筆頭著者、Dimitra Pouliは説明している。
 Biomedical Optics Expressに発表された論文によると、研究チームは、腹腔から切除したばかりの生体組織の検査で、多光子顕微鏡と自動画像および統計分析アルゴリズムの利用を実証した。腹腔は、腹部の一部で転移ガンに冒されることが頻繁で、特に卵巣ガンの患者に多い。人の健全な腹腔組織と転移性組織をこの顕微鏡法と画像テクスチャ分析技術を統合した評価に成功したのは初めてである。
 そのアプローチは、細胞組織と細胞外組織の特徴を顕微鏡レベルで評価するので、ガン転移を処置が容易な初期段階で特定できる。組織を分類するアルゴリズムを使うことで、そのアプローチは画像の解釈における先入観を減らし、人の技能に依存する方法を補完することができる。
 「これは究極的に、手術室で疑わしいエリアと病気のエリアの外科医による直接的リアルタイム判断を助ける。これは、今度は、患者管理に直接影響する」とSchnelldorferは言う。
 「その方法は、組織のほぼどこにでも存在する特有の組織信号を活用しているので、他のガンタイプや他のアプリケーションにも適用可能である。例えば、線維症、心疾患など組織構造や細胞外マトリクス改造が基本的な疾患経過により変えられるようなところである」とTufts大学のIrene Georgakoudiは説明している。

組織テクスチャにヒントを見つける
 多光子顕微鏡は、レーザ光を組織に照射することで機能する。レーザはピーク強度が高いが、平均パワーを小さく保ち、組織に損傷を与えないように極短パルスで光を照射する。さまざまな組織成分とレーザ光が相互作用すると、信号が放出され、それは顕微鏡で取り込まれ画像が生成される。画像が取得されると、自動画像処理アルゴリズムを使って独特のテクスチャ特徴が明らかにされる。これらの特徴は、標準的な手術イメージング機器で取得した画像には見られないが、統計的モデルで分析されて、健全組織か病気の組織かが分類される。
 そのアプローチのキーポイントとなる強さは、イメージング取得と分析が、加えられた造影剤ではなく、組織そのものの成分に基づいていることである。例えば細胞、結合組織を形成するたんぱく質であるコラーゲン。これにより形成と機能に関連する固有素性の分析が完全な非侵襲的、非破壊的にできる。
 この研究で、研究チームは、顕微鏡と分析技術とのこの統合を健全な、また転移性のヒト腹側腹腔組織に適用した。壁側腹腔組織は、コラーゲンで満たされているので、分析実行の一部はコラーゲンファイバのマイクロ構造パターンと、その分子間架橋信号の評価に集中された。
 研究チームは、健全組織と病的組織は、コントラスト(一定の強度がピクセルごとに相違している)と相関性(一定のパターン繰り返し)に関して、明確なパターンがあることを確認した。健全な組織は、これらの特徴で大きな変動を示しているが、転移組織画像は、より均質な強度パターンであり、線維は小さかった。これらの変化は、ガン細胞による自然の結合組織の破壊を反映しており、ガン転移の特質である。

ガンのステージ分類の改善
 ガンの広がりの範囲と位置を判定すること、つまりステージ分類は、効果的なガン治療に極めて重要である。横断的な放射線撮像と白色光腹腔鏡検査は、腹部の転移を判定するために用いられるツールであるが、健全な組織に埋もれた小さな病変を検出する際には不十分である。ガン細胞が転移しているか、組織の微小環境に浸潤し始めているかを判断する際には、生検と顕微鏡評価も、重要な役割を果たす。
 卵巣ガンが広がり始めた時、ほとんどの場合、まず腹腔を線引きする膜、腹膜に現れる。その新方法をテストするために研究チームは、悪性卵巣腫瘍が確認された患者と、疑わしい患者、8名から採取した腹膜生検を分析するためにそれを使用した。
 生検からの41画像を分析して、その技術が41画像から40を正確に分類した(正確さは97.5%)。トータル11サンプルは、転移であると正しく分類され(100%)、30のうち29は、健全であると正しく分類された(96.6%)。
 研究チームは、広い範囲の患者からのサンプル画像で、その方法のテストを継続する計画である。その分析法は腹腔組織に転移した卵巣ガン検出に最適化されているが、その同じ技術は他の組織タイプ、他のガンタイプに適用可能である。
 その方法をテストするために生検を利用しているが、研究チームの究極目標は、ガンが見つかったり、疑わしい身体の範囲にそれを直接適用し、生検も染色も不要にすることである。手術中にその技術がリアルタイム組織分析に使用できるようになるまでには、追加の研究が必要になる。顕微鏡コンポーネントの微小化、顕微鏡に手術計測器を組み込む、取得した画像を直接手術室でリアルタイム分析を可能にすることである。