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ETH、ナノ粒子を光で記録的な低温まで冷却

July, 4, 2019, Zurich--ETH研究チームは、ナノ粒子を記録的な低温まで冷却した。これは、冷却に散乱レーザ光を使用する優れた実験セットアップによるものである。
 これまで、フォトンケージの中でナノ粒子をそこまで低温に冷却した者はいなかった、と研究グループの博士課程学生とポスドク、Dominik Windey とRené Reimannは話している。グループリーダーは、フォトニクス教授、Lukas Novotny。同教授は、140nmガラス玉を絶対零度の上、数千分の1℃までの冷却に成功した。
 研究グループは、成果をPhysical Review Lettersに発表した。このブレイクスルーは、光ピンセットに関与する優れた実験セットアップによるものである。光ピンセットによりナノ粒子は、レーザビームの助けを借りて空中浮揚が可能となる。研究グループは、以前の研究成果ですでに同じ光ピンセットを使用している。そこでは、ナノ粒子をその軸のまわりに超高速回転させた。
 研究グループは今度は、光ピンセットをそれに対して垂直に整列されたフォトンケージで補完した。このケージは、2つの高反射ミラーで構成されており、その位置を研究者は、1mmの数十億分の1に調整できる。
 この精密調整は極めて重要である。粒子がレーザ光の一部を散乱させ、研究者がミラー間距離を利用してどのタイプの光が散乱されるかを制御できるからである。「をれわれはミラーを調整して、最初のレーザ光よりもわずかに高い周波数の光が多く散乱するようにできる」とWindeyは説明している。「より高周波の光はエネルギーも高いので、フォトンは散乱中にナノ粒子からのエネルギーを吸収する」。言い換えると、もしミラーが正しく調整されていると、ガラス玉は連続的にエネルギーを失い、その振動振幅はますます小さくなる、つまり冷却される。
「われわれの実験セットアップの重要な特徴は、粒子の振動が一方向にどんどん小さくなるだけでなく、すべての3Dで小さくなることである。これは、フォトンケージ内のナノ粒子に関連する文献にある他の実験セットアップには可能でない」とWindeyは言う。3Dで冷却が起こることは、論文をいっしょに発表したインスブルック大学の研究者が行った理論計算で確認されている。

魔法の限界に接近
 最新の実験で、研究グループは魔法の限界に少し近づていている。ナノ粒子が、量子基底状態として知られる状態に移って行く温度である。これか達成されると、量子実験は、初めて比較的大きな物体で実施できる。例えば、2つの異なる量子状態が重ね合わせになっているなら、ガラス玉がどのように振る舞うかを研究することができる。
 とはいえ、その点に到達するまで多く研究が必要である。「われわれの温度はまだ、100倍以上高い。量子基底状態に到達したいなら、ガラス玉は著しくスローダウンしなければならない」とWindeyは言う。これは、第2のフォトンケージを適用する、もっと高度なシステムを使うことで今でもできる。本質的に、二段階の冷却システムを実行することになる。

予想外の外乱源
 言うまでもなく、これにはもっと大きな努力が必要である。「システムは極めて影響を受けやすい」(windey)。非常に小さな外乱でさえ、ミラー間の距離を変える。結果的に、粒子はもはや冷却されず、むしろ加熱される。また、もはや光ピンセットの中にとどまらず、出発点に戻る。「最初からわれわれは、予想外の振動と戦わねばならなかった。われわれは、Hönggerbergの実験室が、交通の影響で、日に4µm前後に移動することを発見した。つまり、われわれは夜に実験をしなければならなかった」。
 計測装置は非常に影響を受けやすいので研究者の生活は困難になるが、まさにこの要因に実用的な応用がある。粒子を量子状態に保つと、もっと正確に偏位を確定できる」とWindeyは説明している。
(詳細は、https://www.ethz.ch)