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Science/Research 詳細

MIPT、一般照明カソードルミネセントランプのプロトタイプをテスト

July, 3, 2019, Moscow--モスクワ物理学・技術研究所(MIPT)とロシア科学アカデミーLebedev Physical Instituteは、一般照明向けカソードルミネセントランププロトタイプを設計、テストした。新しいランプは、電界放出現象に依存しており、世界中で利用できるその類似品よりも信頼性、耐久性があり、高輝度である。開発成果は、Vacuum Science & Technology Bに発表された。

 LEDランプは一般的になったが,LEDsだけが白熱電球のクリーンな省エネ代替ではない。1980年代から、世界中のエンジニアが、一般照明のもう1つのオプションとして,いわゆるカソードルミネセント(陰極線)ランプを研究してきた。

この種のランプは、陰極線管を使う古いTVsを機能させた同じ原理に依存している。マイナスに帯電した電極、つまりカソードが真空管の一方に電子ガンとして存在する。最大10kVの電位差が、チューブの反対側にあるプラスに帯電した蛍光体(フォスファ)コート電極、アノードに向かって放出電子を加速する。この電子衝撃が光になる。

カソードルミネセントランプはほぼどんな波長でも光を放出できるという利点がある。赤から紫外まで、使われる蛍光材料に依存する。

 LEDsや蛍光管に対する新しいランプの重要な利点は、それが,いわゆる重要な原材料をに依存しないことである。これらには、ガリウム、インジウム、その他の希土類元素が含まれる。それらの供給は限られており、これらは、健康、防衛、航空宇宙および他の重要産業では、極めて重要であり、他のものに置き換えることができない。

 商用カソードルミネセントランプ電球の量産試行は米国で行われたが、消費者に受け入れられなかった。それが大きくて、カソードが動作温度に達するまでのウォームアップに数秒かかることが主な理由である。
 カソードの中にはウォームアップを必要としないものもある。それらは電界放出カソードとして知られている。電界放出現象に依存するからである。それは、トネリングによるもので、冷陰極管放出電子に静電界だけが関与している。

とは言え、量産可能で手頃な値段で販売される、効率的で、長続きする、技術的に進んだカソードの設計は、困難であることが分かっていた。日本や米国で継続的に努力されているが、最近のロシアの研究は、これについて初めて成功した試みである。

「われわれの電界放出カソードは、通常の炭素でできている。しかしこの炭素は化学物質としてだけでなく、むしろ構造として利用されている。われわれは、炭素繊維から構造を作る方法を見いだした。これはイオン衝撃に耐性があり、高い放出電流を出力し、技術的に製造可能であり、手頃な価格になる」とMIPT真空エレクトロニクス副部長、Evgenii Sheshinは説明している。

炭素に特別な処置をすることで、多くのサブマイクロメートルの突出がカソードの先端に形成される。これは、先端で超高速電界になり、電子を真空内に放出する。

MIPTの研究グループは、カソードルミネセントランプ用にコンパクトな電源も開発した。これは、思い通りの電界電子放出に十分なキロボルトを供給する。光源は、丸いガラス電球に収まっており、そのサイズにはほとんど問題がない。

論文は、プロトタイプのテストとランプの技術的特性について報告している。これらのデータは、量産すると、その新しいカソードルミネセント電球が、LEDsの低価格と張り合うことができることを示唆している。新しい電球は、まだ多くの家庭で使われている、水銀を含んでいて危険な蛍光ランプのフェーズアウトに役立つ。
「LED電球と違い、われわれのランプは、昇温の心配はない。冷却が不十分な、天井のスポットライトなど、ダイオードが直ぐに衰えるようなところで、われわれのランプを使うことができる」とMIPTの真空エレクトロニクス部、論文の共同著者、Dmitry Ozolはコメントしている。