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NRL、AFRL、モノレイヤ半導体で直描量子カリグラフィを開発

June, 19, 2019, Washington--米国海軍研究所(NRL)と空軍研究所(AFRL)の研究チームは、二セレン化タングステン(WSe2)などの単層半導体に、一度に光のシングルフォトンを放出する量子光源を直描する方法を開発した。シングルフォトンエミッタ(SPEs)、つまり量子エミッタは、広範な初期の量子ベース技術、コンピューティング、セキュア通信、センシングや計測などで重要なコンポーネントである。

 同時に数十億のフォトンを放出して一様な光の流れを形成する従来の発光ダイオードと対照的に、理想的なSPEは、正確に1個のフォトンをオンデマンドで生成し、各フォトンは相互に区別できない。これらの特性は、開発中のフォトンベースの量子技術では重要である。加えて、そのような能力は、既存の半導体チップ製造と完全スケーラブルに適合する、正確で再現性のあるSPEsの配置を可能にする材料プラットフォームでは実現されている。

 NRL研究チームは、AFMを使って、ポリマフィルム基板上の二セレン化タングステン(WSe2)の単層にナノスケールの窪み、つまりインデントを作製した。ナノインデントの周りに高度に局所化された歪場が形成され、WSe2にシングルフォトンエミッタ状態ができる。この発光をAFRLで時間相関計測し、これらの状態が真のシングルフォトン性質であることを確認した。これらのエミッタは、輝いており、高率でシングルフォトンを生成する。シングルフォトンは、新しいアプリケーションにとって、スペクトル的に安定した、重要要件である。

「この量子カリグラフィにより、光導波路、キャビティ、プラズモニック構造との簡易結合にSPEsの任意パタンの決定論的配置、リアルタイム設計が可能になる。われわれの成果は、ナノインプリンティングアプローチが、大きなアレイ、つまり量子エミッタのパタンを作製する上で効果的であることも示唆している。大型アレイは、量子フォトニックシステムのウエファスケール製造のためである」と主席研究者、Berend Jonker, Ph.D.は説明している。

 研究論文の筆頭著者、Dr. Matthew Rosenbergerは、この発見の重要性を指摘し、「SPEsの多目的配置に加えて、これらの成果は、2D材料にナノメートルスケールの精度で歪を与える一般的な方法を示している。これにより、2Dデバイスの歪エンジニアリングのさらなる研究と,将来のアプリケーションに貴重なツールが提供される」と話している。

この研究の成果は、2D材料をシングルフォトンエミッタの固体ホストとして利用する道を開く。アプリケーションは、DODミッション、例えばセキュアな通信、センシングや量子コンピュテーション。そのようなアプリケーションは、離れたDOD軍間の、盗聴や暗号解読に強い通信を可能にする。これは、兵士の安全を確保するために重要な要件である。
 チップでの量子コンピュテーションは、センサアレイで取得した膨大なデータを迅速に分析するオンボード能力となる。すなわち、全データセットを送る必要がなくなり、帯域要件を減らせる。
研究成果は、ACS Nanoに掲載された。