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量子ドットレーザの波長制御がセンシングや通信をアシスト

June, 13, 2019, Salt Lake City--ユタ大学(University of Utah)物理学の研究チームは、量子ドットレーザで起こる主要な問題の解決法を発見した。これまでに見られなかった現象は,フォトニクス研究分野では重要になる。これには、いずれ、電子の代わりに光を使って情報をコードするマイクロチップの実現も含まれる。
研究成果は、Nature Communicationsに発表された。
 
 量子ドットでレーザを造ろうとしている研究者は多い。量子ドットは、100原子径程度のサイズに成長させた半導体材料の微小結晶である。結晶サイズが、光ビームの波長を決める。青から、赤、赤外まで可能である。

 量子ドットレーザに対する関心は高い。多様な半導体材料を使い,多様なレーザ形状やサイズを選び、様々なサイズで結晶を成長させることで特性を調整できるからである。不都合な点は、量子ドットレーザが微小欠陥を含むことがある点。そのため、光は多波長に分かれ、ビームのエネルギーを分散させ、出力を弱める。理想的には、出力を一波長に集中させたい。

 新しい研究は、この欠陥を補正しようとした。まず、ジョージア工科大学(Georgia Institute of Technology)と共同で、セレン化カドミウムで50の微小ディスク形状量子ドットレーザを作製した。Uのチームは、個々のレーザのほぼ全てが欠陥を持っていて波長を分割することを示した。

研究チームは次に、2つのレーザを結合して波長分割を補正しようとした。1つのレーザフルゲイン、これは可能な限り最大量のエネルギーである。フルゲインを達成するために、研究チームは、グリーンの光を、「ポンプ」光として最初のレーザに照射した。量子ドット材料は、その光を吸収し、より強い赤色光を再放射した。レーザに照射したグリーン光が強ければ強いほど、エネルギー利得はますます高くなる。第2のレーザに全く利得がないと、2つのレーザ間の差は,相互作用を阻止するが、それでもまだ波長分割は起こった。しかし、研究チームがグリーン光を第2のレーザに照射すると、その利得は増加し、両レーザ間の利得差はなくなった。両レーザの利得が同じになると、両レーザの相互作用が波長分割を補正し,エネルギーを単一波長に収束させた。これは、今まで誰も観察したことがなかった初の現象である。

 その成果は、オプティクスとフォトニクス研究の新たな分野を示唆している。過去30年、研究チームは、従来のエレクトロニクスで使われた電子ではなく、レーザ光を使って情報を運ぶ実験を実施してきた。多くの電子をマイクロチップに詰め込んでコンピュータを走らすより,その代わりに光を使うことを考える人も存在する。レーザは、そこで大きな役割を担う。波長分割の補正は,光を利用した情報コントロールに大きな利点を提供する。また、この分野で量子ドットなどの材料を使うメリットは大きい。
「量子ドットで欠陥のないレーザを造ることは不可能ではないだろうが、高価であり時間がかかる。比較すると、結合は、迅速かつより柔軟で経済的な問題補正法だ。これは、われわれが完璧な量子ドットレーザを造る必要がないようにするための技術である」と物理学・天文が准教授、Evan Lafalceはコメントしている。

(詳細は、https://unews.utah.edu/)