コヒレント特設ページはこちら

Science/Research 詳細

ローコスト半導体でほぼ完璧なパフォーマンスを計測

June, 6, 2019, Stanford--太陽パネル、カメラセンサ、医療イメージング機器に利用されてる先端エレクトロニクスの、より高価な単結晶半導体に、微小、製造容易な粒子、量子ドットが、いずれ取って代わる。量子ドットは、コンシューマ市場に入り始めているが、例えば量子ドットTVsは、その品質に関する長期的な不確定性によって制約されていた。今後は、スタンフォード大学の研究チームが開発した新しい計測技術が、最終的にそうした問題を解消する可能性がある。

「従来の半導体は単結晶であり、特殊な条件下の真空で成長された。量産可能なこれらは、フラスコ、ラボでも造れる、また、それらは最良の単結晶と同等に優れていることを示した」とスタンフォード大学院生、David Hanifiは説明している。研究成果は、Scienceに発表された。

研究チームは、量子ドットが吸収した光をいかに効率的に再放出するかに焦点を当てていた。これは、半導体品質の明確な評価基準である。量子ドットの効率を把握しようとする以前の試みは高性能を示唆していたが、これは、量子ドットが単結晶に対抗できることを自信をもって示す初の計測法である。

この成果は、スタンフォードの材料科学・工学教授、Alberto Salleoとカルフォルニア大学バークリー校、ナノサイエンス/ナノテクノロジーSamsung Distinguished Professor、Paul Alivisatos間の共同成果である。Alivisatosが強調しているのは、計測技術が新技術と材料につながるという点である。
「これらの材料は、きわめて効率的であり、既存の計測法は、それらがどの程度優れているかを定量化できなかった。これは大きな飛躍である。発光効率が99%を優に上回る材料を必要とするアプリケーションが、いずれ可能になる、ただしそのほとんどはまだ発明されていない」とAlivisatosは話している。

高価な製造装置の必要性に先行できることが、量子ドットの唯一の利点と言うわけではない。この研究以前に、量子ドットが一部の最良の結晶の性能に近づき、上回る兆候があった。量子ドットは、カスタマイズの可能性が極めて高い。そのサイズは出力光の波長を変える、これは生物試料、TVs、コンピュータモニタなど、色ベースのアプリケーションには有用な特徴である。

こうしたプラスの品質にも関わらず、量子ドットの小サイズの意味するところは、一つの大きな完全シングル結晶の仕事をするには数十億のQDsが必要となることである。これらの量子ドットをそんなにも多く作ることは、不正確に成長するものが出る可能性が多くなる、性能を阻害しうる欠陥の可能性が増えることを意味する。他の半導体の品質を計測する技術は、量子ドットは吸収する光の99%以上を放出するが、それは欠陥の可能性についての問いへの答には不十分であることをこれまでに示唆していた。これを行うために、研究チームは、これらの粒子の正確な評価に、より適した計測技術を必要としていた。

「われわれは,放出効率を99.9~99.999の領域で計測した。もし半導体が、吸収する全てのフォトンを光として放出できるなら、素晴らしい科学であり、今までに存在しなかったデバイスを作ることができるからである」とHanifiは説明している。

研究チームの技術は、単に発光を評価するのではなく、活性化された量子ドットによって生まれる過剰な熱を調べることに関与している。つまり、過剰な熱は、非効率放出の兆候だからである。この技術は、他の材料には普通に用いられているが、このように量子ドットの計測に適用されたことはなかった。この方法は,他の研究者が使用したものよりも100倍精度が高かった。量子ドット群が、吸収した光の約99.6%を確実に放出したことを確認した(潜在的な誤りは、いずれの方向でも0.2%)、これは最良の単結晶発光に匹敵する。

「多くの潜在的な欠陥を持つ膜が,作製できる最も完全な半導体と同程度の性能であることは驚きであった」と論文のシニアオーサ、Salleoは話している。

懸念に反して、結果は、その量子ドットが際立って欠陥耐性が高いことを示している。その計測技術は、様々な量子ドット構造をどのように相互比較するかをしっかりと解決する初めてのものでもある。特殊なコーティング材料の正確な8原子層の量子ドットは最速の光を放出した、優れた品質を示している。それらドットの形状は、新しい発光材料の設計へのガイドとなるに違いない、とAlivisatosは話している。

プロジェクトの次のステップは、一段と正確な計測を開発することである。これらの材料が99.999%以上の効率を達成すると判断できるなら、これまでになかった技術に可能性を開くことになる。
(詳細は、https://news.stanford.edu/)