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ハイパースペクトラルカメラ、瞬時に大量のデータを取得

June, 4, 2019, Houston--NASAから助成をうけるライス大学のTuLIPSSプロジェクトは、ポータブル分光計の基準を定める。
 裸眼では観ることができない細部を明らかにするために、ライス大学のエンジニアは、航空機、ドローンに搭載され、いずれはハンドヘルドにもなるポータブル分光計を構築している。
 ライスの工学部、Wiess自然科学部、バイオエンジニア、Tomasz Tkaczykのチームは、NASA助成プロジェクトの最初の成果をOptics Expressに発表した。これは、極めて多様性に富んだ小型で高度な分光計の開発である。
 分光計は、対象物や情景から光を収集し、波長を分離し、それらを定量化して、見たものの化学的成分、他の特性を判定する測定器。
 ライスのデバイスは、Tunable Light-Guide Image Processing Snapshot Spectrometer (TuLIPSS)「可変光ガイド画像処理スナップショット分光計」と言い、場面をライン毎にスキャンして後で再構築する。この点は、現在のシステムとの違いである。TuLIPSSにより、研究者は、可視光および近赤外スペクトルのデータを直ちに取得することができる。
 TuLIPSSが生成するハイパースペクトル画像の各ピクセルはスペクトル情報、または空間情報のいずれかを含んでいる。この場合の「ピクセル」は、画像成分をディテクタに供給する数千の光ファイバ、柔軟な光ガイドである。ファイバは位置変更が可能であるので、研究者は、ディテクタに送られる画像とスペクトルデータのバランスをカスタマイズできる。
 例えば、デバイスは、木の性質を計測してそれが健全か病気であるかが分かるようにチューニング可能である。細胞、1枚の葉、近隣あるいは農場、または惑星についても同じことができる。連続取得モードは、カメラの電動に近く、これにより静止した情景のスペクトル「フィンガープリント」が時間経過とともにどのように変化するかを示すことができる、また稲妻のスペクトルシグネチャをリアルタイムで捉えることもできる。
 バイオエンジニア、Tomasz Tkaczykは、「TuLIPSSは、類例がない。一瞬のうちに、カメラと同じように動作し、全てのハイパースペクトルデータ、研究チームの言うデータキューブを取得するからである。つまり、航空機、あるいは軌道を回るサテライトが、データを歪ませる被写体ブレを避けることができるほどに素早く地上の画像を撮ることができる。オンボード処理は、データを選別して、必要なもののみを中に送るので、時間とエネルギーの節約になる」と説明している。
 「Hurricane Harveyのような場合には、これは興味深いツールになる。洪水や汚染の可能性があると、貯水池の上方を飛ぶことができるデバイスが、水が人々の飲料に安全かどうかを教えることができる。到達が困難な場所なら、人をその場所に派遣するよりも効果的である」と同氏は話している。
 通常のカメラでは、レンズが入力光をセンサチップに集光し、データを画像に変換する。TuLIPSSでは、レンズはその光を仲介部、つまり光ファイババンドルに集光させる。
 現在のプロトタイプでは、これらのファイバは、30000を超える空間サンプル、450~750nm範囲で61のスペクトルチャネルを集め(基本的に数十万のデータポイント)、プリズムでその成分バンドに分け、ディテクタに送る。ディテクタは、つぎにこれらのデータポイントをソフトウエアに供給し、ソフトウエアはそれらを所望の画像、つまりスペクトルに再結合する。
 ファイバアレイは、入力点で密集しており、出力側では個々の対処可能な列に再配置され、その間のギャップはオーバーラップを避けるためのものである。列の間隔をとることで研究者は、特殊アプリケーション向けに空間サンプリングおよびスペクトルサンプリングを調整することができる。
 論文の筆頭著者、Ye Wangのチームは、ファイババンドルを手で組立て、位置決めしてプロトタイプを作製した。さらにライス大学内および周囲の場所を使ってそれをテストした。TuLIPSSの微調整のために建物の画像を再構成し、キャンパスの木々のスペクトル画像を撮って、その種類を「検出」した。また、スペクトルデータだけで、様々な植物の健全さの分析にも成功した。
 ヒューストンでの、動くトラフィックの連続的画像取得は、どのスペクトルが時間経過とともにシフトし(移動する車輌や変化する交通信号)、どれが安定しているかをそのシステムが判断する能力を示した。その実験は、分光計が動的状況で被写体ブレをどのように選別するかを示すための概念実証に有用であった。
(詳細は、http://news.rice.edu/)