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Science/Research 詳細

発展途上国の医療診断に有望な3Dプリント顕微鏡

May, 31, 2019, Washington--コネチカット大学の研究チームは、3Dプリンティングを使って、フィールドやベッドサイドで使える小型、ロバストで安価なポータブル高解像度顕微鏡を作製した。この装置の高解像度3D画像は、糖尿病、鎌状赤血球病、マラリアおよびその他の病気を検出するために使える可能性がある。
 「この新しい顕微鏡は、特別な染色、ラベルは必要とせず、ローコスト医療診断テストの利用増を促進する。特に、ヘルスケア、ハイテク診断施設の利用が限られている発展途上地域で有用である」とコネチカット大学の研究チームリーダー、Bahram Javidiはコメントしている。
 研究チームは、デジタルホログラフィック顕微鏡をベースにしたこの新しい顕微鏡をOptics Lettersに発表した。このポータブル装置は、一般に研究室の光学テーブル上で使用される従来のデジタルホログラフィック顕微鏡の2倍の解像度の3D画像を生成する。バイオメディカルアプリケーションだけでなく、これは研究、製造、防衛や教育にも有用である。
 「システム全体は、3Dプリントされたパーツと一般的な光学部品で構成されており、安価に、容易に再現できる。別のレーザ光源やイメージセンサなら、もっとコストを下げられる。われわれの推定では、1台が数100ドルであるが、量産すれば大幅に低コスト化できる」とJavidiは説明している。
 従来のデジタルホログラフィック顕微鏡では、参照光波とサンプルからの光の干渉から生まれるホログラムをデジタルカメラが記録する。次にコンピュータが、このホログラムをサンプルの3D画像に変換する。この顕微鏡のアプローチは、ラベルや染色なしに細胞を調べるのに有用であるが、一般に複雑な光学的設定、振動や温度変動のない安定した環境が必要になる。計測にノイズが入るからである。このため、デジタルホログラフィック顕微鏡は、一般に、研究室だけで利用されている。
 研究アチームは、構造化照射顕微鏡として知られる超解像度技術と統合することで、均一照射で可能になるものよりも、デジタルホログラフィック顕微鏡を一段と強化することができた。チームは、透明コンパクトディスクを利用して構造化光パタンを生成することでこれを達成した。
 「顕微鏡を3Dプリントすることにより、われわれは正確、恒久的に光コンポーネントを調整することができた。これは、システムを極めてコンパクトにしながら、解像度改善に必要なコンポーネントである」とJavidiは話している。

新しい顕微鏡のテスト
 研究チームは、解像度チャートの画像を記録し、次に高解像度画像を再構築するアルゴリズムを利用することでシステムの性能を評価した。これは、新しい顕微鏡システムが、0.775µmの解像特性を持つことを示していた。これは、従来システムの2倍である。より短い波長の光源を使うと、解像度はさらに向上する。
 追加実験は、生体細胞の変動を時間をかけて分析できる安定度であることを示していた。これは、数十ナノメートルのスケールで計測する必要がある。チームは、次に、緑藻の高解像画像を取得することで生物学的イメージングにそのデバイスが適用できることを証明した。
 「われわれの設計は、高解像度を持つ高安定システムの実現である。これは、細胞下構造や動力学の研究に極めて重要である。これらは、著しく小さな細部や変動を持つからである」と同氏は話している。
 研究チームによると、現在のシステムは、実用用途の準備が整っている。計画では、それを細胞同定、病気診断などのバイオメディカルアプリケーションで利用する。また、継続的に国際的パートナーと協力して、ヘルスケアの利用が制限されている遠隔地域で病気識別の研究を行う。研究チームは、デバイスのコストを増やすことなく、システムの解像度、SNR向上にも取り組んでいる。