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MIT、励起子の動きを初めて直接観察

April, 21, 2014, New York--励起子と呼ばれる疑似粒子は、太陽電池、LED、半導体回路などのデバイス内でエネルギー移動に関わっており、何十年も前から理論的には知られている。しかし材料内での励起子の動きをこれまで直接観察したことはなかった。
 MITとニューヨークシティ大学の研究チームは、励起子の動きを直接撮像することに成功した。研究チームによると、この成果はエレクトロニクス研究における大きな前進につながる。また、光合成のような自然のエネルギー移転についても理解が進む。論文の著者、Vladimir Bulovic教授は、「これは励起子拡散過程の初の直接観察であり、結晶構造が拡散過程に飛躍的に影響をあたえることを示している」と話している。
 励起子はあたかも粒子のように物質の中を移動し、負の電荷を持つ電子と、電子が取り除かれた場所、つまりホールとを一組にする。全体的に見れば、励起子は中性であるが、エネルギーを運ぶことができる。例えば、太陽電池では、入ってくるフォトンが電子にぶつかり、電子を高いエネルギーレベルに叩き上げる。その高いエネルギーは物質の中を励起子として伝搬する。つまり、その粒子そのものは動かないが、押し上げられたエネルギーが粒子から粒子へと伝えられる。
 この新しい技術は光学顕微鏡と、励起子のエネルギーを可視化する特殊な有機化合物を組み合わせている。
 MITのポスドク、Parag Deotare氏は、「この新しい技術によって励起子が物質の中を動いていくときにいかに速くトラップされるかを決めるのが物質のナノスケール構造であることを実証できた」と語っている。
 同氏によると、LEDのようなアプリケーションでは、エネルギーが漏れてなくならないようにするには、このトラッピング(捕獲)を最大化することが望ましい。太陽電池では、逆に最小化することが重要になる。
 「われわれは、ローコストの太陽電池やLEDなど、ほとんどの物質の特性を決めている無秩序によってエネルギーの流れがどのように妨げられているかを示した」(Baldo氏)。
 研究チームによると、この実験では、よく知られた分子結晶、テトラセンを用いたが、この方法はどんな結晶、薄膜材料でもほぼ適用できる。
(詳細は、Nature Communications)