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光ソリトンに新たなアプリケーション

February, 20, 2019, Munich--マックスプランク量子光学研究所(MPQ)とルートヴィッヒマクシミリアン大学(LMU)が運営するアト秒物理学研究所(LAP)のレーザ物理学者は、パッシブフリースペース共振器で初めて散逸的ソリトンを生成した。
 ソリトンは、全ての波の中で最も安定している。全ての他の波形で分散となる条件下で、ソリトンは、独立した進行途上で、乱されることなく、形状や速度はいささかも変わらない。ソリトンの自己安定化特性は、レーザオプティクス分野で無限の重要性示している、特に超短光パルスの生成である。
 ミュンヒェン、アト秒物理学研究所(LAP)のDr. Ioachim Pupezaをリーダーとするチームは、パッシブフリースペース共振器で初めて光ソリトンを生成した。その技術を用いてレーザパルス圧縮が可能になり、一方でピークパワーが増し、超高速力学の探究および精密分光学ではフリースペース増強キャビティに新たなアプリケーションが生まれる。

現在、光ソリトンは、特に量子オプティクスや超高速力学では、レーザ技術の不可欠の要素である。
 MPQとLMUが運営するLAPの物理学者は、パッシブフリースペース共振器で初めて時間光ソリトン生成に成功した。そのために研究チームは、350-fs赤外レーザパルスと波長1035nmおよび繰り返しレート100MHzを統合して, 4枚のミラーと薄いサファイア板で構成された、新設計パッシブ光共振器を作製。「光パルスの電磁場通過が結晶の屈折率に非線形変化を起こす」と論文の筆頭著者、Nikolai Lilienfein氏は説明している。「これは動的位相シフトになり、共振器に生ずる分散を完全に相殺するともに、パルスのスペクトルを広げる」。共振器に必然的に起こるパワー損失は、干渉法を使って結合されたレーザ光源によって同時に相殺されるので、ソリトンは原理的に共振器の中で無限に循環する。さらに、研究チームは、キャビティソリトンへのエネルギー入力を制御する高効率な方法を開発した。併せて,これらの計測によりチームはパルス幅をほぼ一桁圧縮して37fsとし、ピークパワーは3200倍に強めることができた。

この強化版共振器技術は、高精度極紫外(XUV)アト秒パルストレインの生成に新たな機会を開くことになる。これによって、今度は、研究者はサブアトミックプロセス動力学を特徴付けることができる。特に電子の動きの観察が、これまでに可能だったよりも非常に詳細にできる。「過去数年、アト秒物理学の実験で使える強化版共振器から比類のない強みを実現できた。この新技術は、そのようなシステムで達成可能なパルスパワーと安定性で、さらに大きな進歩に向けた道を開くことになり、同時に実験セットアップの複雑さも低減される」とDr. Ioachim PUpezaは話している。
 このような改善は、XUV周波数コム分光学にも恩恵がある。それは、原子核における量子遷移に基づいた新しい世代の光時計の開発で極めて重要だからである。