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レーザを使って特定の人に音声データを伝送する新技術

February, 1, 2019, Sugar Land--MITリンカーン研究所(Massachusetts Institute of Technology’s Lincoln Laboratory)の研究チームは、レーザがどんな受信装置も使用せずに、可聴メッセージを人に伝えられることを実証した。極度にターゲットをしぼった音声信号を空中送信できる機能は、騒音の多い部屋での通信、あるいは活動的なな銃猟者など危険な状況の個人への警告に利用できる。
 Optics Lettersで、研究チームは、2つの異なるレーザベースの方法を利用して様々な音色、音楽と録音されたスピーチを会話の音量で伝送できることを報告している。
「われわれのシステムを使って一定の距離で、情報を直接だれかの耳に届けることができる。これは、眼や皮膚に安全なレーザを使い、可聴信号を特定個人に限定して、どんな設定でも送信できる初のシステムである」と研究チームリーダー、Cahrles M. Wynnは説明している。

新しいアプローチは、光音響効果に基づいている。これは材料が光を吸収して音波を形成する時に起こる。この場合は、研究者は空中の水蒸気を使い光を吸収して音を作った。
「比較的乾燥した条件でもこれは機能する。空中には常にわずかな水が存在するからである、特に人の周囲に。強く水に吸収されるレーザ波長を使うと、多くの水が必要にならないことが分かった」とWynnは言う。
 この新しい音響伝送法の一つは、動的光音響分光法(DPAS)という技術から派生した。これは、研究チームが以前に化学検出用に開発したものである。以前の研究では、音速でレーザビームをスキャニング、掃引すると化学的検出が改善されることを発見した。
「この新しい論文は、水吸収波長のレーザビーム音速掃引を音を作る効率的な方法に使えることを示している」と論文の筆頭著者、Ryan M. Sullenbergerは説明している。

DPAS関連アプローチで、研究チームは、様々な周波数、つまり可聴ピッチを光にエンコードするためにレーザ掃引波長を変える。このレーザ掃引技術の固有の特徴の一つは、信号が送信者から一定の距離でのみ聞こえることである。すなわち、メッセージは、光ビームを横切る全ての人ではなく、個人に送ることができる。多数の個人をターゲットにしてメッセージを送る可能性も開かれている。

実験室で研究チームは、商用利用可能な装置が2.5メートル以上離れた人にレーザ掃引技術を利用して60dBの音声を送れることを示した。研究者によると、同システムの伝送距離は簡単に拡張できる。また、レーザ掃引を必要とせず、レーザビームパワーを変調することでメッセージをエンコードする従来の光音響法もテストした。
 Sullenbergerによると、この2つの技術にはトレードオフが存在する。「従来の光音響法は高忠実に音を出せるが、レーザ掃引は、音量が大きな音響機器である」。
 研究チームの次の計画は、もっと長い距離でその方法を屋外実証することである。