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マイクロチップサイズ化学センサ向けに新しいレーザ技術

December, 19, 2018, Vienna--「周波数コム」は、化学センサに最適である。TU Wienで開発された画期的な技術は、非常に簡単かつロバストな方法で、これらレーザ周波数を生成する。
 TU Wien(ウィーン工科大学)では、この特殊レーザ光を使って微小空間の化学分析ができる。これはミリメートルフォーマット化学ラボである。この新しい特許申請中の技術で、周波数コムはシングルチップ上で、非常に簡単かつロバストに生成できる。この研究成果は、Nature Photonicsに発表された。
 TU Wienでは、周波数コムは量子カスケードレーザ(QCL)で生成される。この特殊なレーザは、多数の異なる層で構成された半導体構造。電流がその構造に送られると、レーザが赤外域で発光する。光の特性は、層構造の形状を調整することで制御できる。
 「特殊周波数の電気信号を用いて、QCLを制御し、全て結合した、一連の光周波数を発光させる」と論文の筆頭著者、Johannes Hillbrand氏は説明している。「われわれの技術の大きな利点は、周波数コムの構造安定性である」とBenedikt Schwarz氏は言う。この技術がなければ、レーザは擾乱の影響を著しく受ける。これはラボの外では不可避である。例えば、温度変動、レーザへの戻り光の反射など。「われわれの技術は、楽々と実現可能であり、非常に困難な環境でさえ、実用的なアプリケーションに完璧である。基本的に、われわれが必要としているコンポーネントは、あらゆるモバイル電話に見いだせる」とSchwarzは話している。

QCLが赤外域で周波数コムを生成することは重要である、ほとんどの重要な分子の多くが、この周波数域で最もよく検出できるからである。「様々な大気汚染物質、医療診断で重要な役割を担う生体分子も、非常に特殊な赤外光周波数を吸収する。これが分子の光フィンガープリントである。したがって、赤外周波数がガスサンプルによって吸収され、それを計測すると、どの物質が含まれているかを正確に指摘できるのである」とJohannes Hillbrand氏は説明している。

「ロバストであるため、われわれのシステムは、あらゆる他の周波数コム技術に対して決定的な優位性がある。簡単に小型化でき、レンズ系は不要、可動パーツも不要、アイソレータも不要であり、必要な構造は微小。計測システム全体は、ミリメートルフォーマットでチップに収容化可能である」。
 このため、特殊なアプリケーションが考えられる。チップをドローンに搭載し、大気汚染物質を計測できる。チップを壁に接着させて建物の中の微量な爆発物を探索できる。チップを医療装置で用いて、呼気の化学物質を分析することで病気を検出できる。
(詳細は、https://www.tuwien.ac.at)