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新しいディスプレイ設計が、軽量コンパクトなスマートグラスを実現

December, 11, 2018, Washington--Letiの研究チームは、拡張現実(AR)、スマートグラス用のシースルーディスプレイの基本的に新しいアプローチを開発した。メガネから直接目に画像を投影することで、その新しいデザインにより、ユーザが方向情報、あるいはレストランの評価情報などを見ることが、いずれ可能になる。
 デバイスは、従来のメガネとほとんど区別がつかない。「ディスプレイ技術から出発してそれを可能な限り小さくしようとするよりも、われわれは、スマートグラスを通常のメガネのように見え、感じられるという考えから出発した」とフランスのLetiの研究チームリーダー、Christopher Martinezは説明している。「われわれのコンセプトを展開するには、非常に大きな想像力が必要だった。われわれは、一般に必要とされる大きな光学コンポーネントを排除し、代わりに、画像形成に目そのものを使うからである」。
 Opticaに発表された論文で研究チームは、新しい網膜投射ディスプレイコンセプトを詳細に説明している。また、当初の光学シミュレーションからの実際的な成果を報告している。この新しいアプローチを使用するメガネは、ビデオを映し出すには役に立たないが、テクスト形式または単純な図形で情報を提供できる。
 「われわれは拡張現実(AR)アプリケーションに取り組んでいるが、その新しいデイスプレイコンセプトは、視覚障害者にも役立つかもしれない」とMartinezは言う。「目に存在する障害を投射に溶け込ませ、視覚障害者にはテクストなどの情報を見る方法を提供する」。

目に画像を形成
 型破りなディスプレイ設計は迅速に個別のピクセルを映し、脳がそれらを組立て文字や言葉を形成する。「われわれはメガネ上に画像を出すのではなく、代わりに、目に画像を創るフォトンの形式で情報が放出される」とMartinezは説明している。
 設計コンセプトにしたがい、この妙技はレーザあるいは導光コンポーネントを通した他の光源からのフォトンをメガネのレンズ内に作られたホログラフィック光学素子に送ることによって実現される。ホログラフィック光学素子は、標準的なものよりも著しく小さく、同じレーザ光の相互作用を用いて感光性プラスチックに形成される。クレジットカードを偽造から守るようなホログラムを作る相互作用である。
 そのコンセプトを機能させるには、全ての投影フォトンが位相同期し、コヒレンスが一致していることが重要である。そうでなければ、雑音画像が形成される。それは、コーラスグループが同じ歌を歌っているが、時を異にして始めたり止まったりするのを聞いているのに似ている。研究チームはホログラフィック素子を使って位相を同期させる、歌手が同時にスタートできるようにキューを出すようなものだ。
 「相互にわずか数百µmしか離れていない、フォトンエミッタの位相を調整するために従来法を使うのは非常に複雑になる、例えば光学構造を持つマスクなどだ。われわれの設計は、独自のホログラフィック素子を使い、レファランスビームで位相を一致させることでフォトンを同期させる」。
 設計には、フォトンをコヒレントにするライトガイドグリッドも含まれる。これは、全ての歌手が同じスピードで歌うことを保証することに近い。このコンポーネントは、集積フォトニックアプローチを使って作られている。
 研究チームによると、このディスプレイコンセプトは、最近の集積フォトニクスにおける開発によって可能になる網膜投射にとって新たな機械の重要例となる。集積フォトニクスは、通信波長を使用するアプリケーションから、ディスプレイで使用できる可視波長へ移行してきた。
 メガネレンズで利用できる空間は限られているので、最初のプロトタイプは解像度300×300ピクセルとなりそうである。研究チームによると、これは2つのディスプレイをスタックすることで改善可能である。重要な点は、この設計によって利用可能なピクセルを使う全く新しい方法が可能になることである。これは、従来のディスプレイのように方形に制約されない。
 「網膜投射形成にホログラフィック素子を使うことは、従来のディスプレイに使用されている標準ピクセルグリッドとは全く異なる。例えば、情報は視野の左部分と右部分に投射されるが、その間には情報はないので、ディスプレイの複雑さが増すことはない」とMartinezは説明している。
 新しい設計の詳細な光学シミュレーションが検証され、発光点が周期パタンではなく、ランダムにアレンジされるなら、より鮮明な画像が創れることが明らかになった。研究チームは現在、このランダム配置を最高に仕上げる方法を考案している。
 研究チームは、実用的なプロトタイプを作製する前に個々のコンポーネントを造り、テストする計画である。最初のプロトタイプは、静的な単色画像の表示となるが、網膜投射アプローチは、動的マルチカラーディスプレイにも利用できると研究者は考えている。