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光の波形制御で分子の同定を高速・簡便化

October, 26, 2018, 東京--東京大学大学院理学系研究科物理学専攻の井手口拓郎講師らの研究グループは、最先端の光技術の知見を基にこれまでのフーリエ変換分光法を見直し、その計測装置に高速に角度変化する鏡を利用した波形制御技術を導入する工夫を施した。その結果、従来手法を約1,000倍高速化できることを見いだし、1秒間に1万回以上の計測をすることに成功した。
 今後、短時間のうちに複雑な化学反応を経る燃焼過程の解析や、リアルタイムの環境モニタリング、食品、生物試料の分析などに利用されることが期待される。
 物質に当てた光の吸収を測定することで物質を構成する分子種を同定する化学分析法は、20世紀後半以降の科学と産業の発展に大きく寄与してきた。その中でフーリエ変換分光法と呼ばれる手法は原理がシンプルであるため、化学分析の標準手法として過去50年間にわたり広く利用され続けてきた。しかし、この手法は計測に時間がかかるため、短い時間内に起こる現象を計測することや、統計データを取るために一定時間内に多くの計測をするという、現代科学の要請に応えることができていなかった。
 光科学の研究者たちは、この問題を解決する手法を開発してきたが、複雑で特殊なレーザが必要などの問題を抱えており、誰にでも使える簡便な計測器を実現するには至っていない。

発表の要点
・光の波形を操作する技術を用いることで、分子の種類と量を計測する分光手法の計測を1,000倍高速化した。

・最先端の特殊レーザで生み出される位相の揃った光、コヒーレント光を用いた複雑なシステムでのみ実現していた毎秒1万回の高速計測を、身近なLEDや太陽光など位相が揃っていない光によって動作する簡便なシステムで達成した。
・燃焼などの複雑でパターン化していない化学反応現象の解明や、広い範囲でのリアルタイム環境モニタリング、食品、生物試料の分析などへの利用が期待される。

 研究成果は、2018年10月25日(英国時間)に国際科学誌「Nature Communications」のオンライン版で公開された。
(詳細は、http://www.s.u-tokyo.ac.jp)