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Science/Research 詳細

長期間運転可能なイッテルビウム光格子時計の開発

September, 27, 2018, つくば--産業技術総合研究所(産総研)物理計測標準研究部門時間標準研究グループ 小林拓実研究員、赤松大輔主任研究員、安田正美研究グループ長、周波数計測研究グループ 稲場肇研究グループ長は、横浜国立大学と共同で、長期運転できるイッテルビウム光格子時計を開発した。
 近年、光格子時計など光を用いた原子時計の進展は目覚ましく、国際度量衡局で開催されたメートル条約関連会議において、2026年頃をめどに、時間の単位である「秒」の定義を現行のマイクロ波から光に基づく定義に変更することが検討されている。定義改定に向け、国際的な標準時である国際原子時の精度向上に貢献できること、原子時計自身の精度を向上させること、などの必要条件が示され、これらの条件を達成すべく、さまざまな原子を用いた研究が各国で展開されている。光格子時計が国際原子時の精度向上に貢献するためには、長期間の運転が不可欠となる。しかしながら、光格子時計は多数のレーザ光源を必要とする複雑な装置であるため、長期間安定して動作させることは難しい。
 今回、時計の動作に必要な全てのレーザ光源を光周波数コムで制御する、新しい制御システムを構築することで、イッテルビウム光格子時計の安定した動作を実現した。数カ月の実験期間内において1回3時間以上の運転を定期的に行い、積算運転時間は60時間以上となった。これまで他機関のストロンチウム光格子時計で長期運転が実現されていたが、イッテルビウムにおいても実現可能であることを示した。この光格子時計とマイクロ波を用いた従来の原子時計を定期的に比較することで、国際原子時の精度向上への貢献が現実的になった。さらに、この安定動作可能な光格子時計を用いることで、時計としての誤差要因を詳細に評価することが可能になり、時計の精度が9000万年に対して1秒程度の誤差に相当することを確認した。開発したイッテルビウム光格子時計により、将来の国際原子時の精度向上への貢献が期待される。
 この技術の詳細は、学術誌IEEE Transactions on Ultrasonics, Ferroelectrics, and Frequency Controlで2018年9月18日にオンライン掲載された。
(参照、www.aist.go.jp)