コヒレント特設ページはこちら

Science/Research 詳細

NIST、顕微鏡の下に光学顕微鏡を置いて原子精度を達成

June, 11, 2018, Gaithersburg--過去20年で研究者が発見したことは、可視光の約半分、数100ナノメートル、従来の限界よりも遙かに小さな物質を検出、追跡、撮像できるということである。
 この画期的な研究は、2014年にノーベル化学賞を獲得した。これにり受精卵のタンパク質追跡が可能になり、脳の神経細胞間で分子がどのように電気接続を形成するかを可視化し、微小モーターのナノスケール動作を研究することが可能になった。
 今回、NISTの研究チームは、新しい精度レベルでこれらのナノメートルスケールの詳細を計測できる顕微鏡を可能にした。
 「われわれは顕微鏡の下に光学顕微鏡を置いて原子スケールに近い精度を達成した」とNISTのSamuel Stavisは話している。同氏は、この研究のプロジェクトリーダー。
 光学顕微鏡は従来、ナノメートルスケールの研究には用いられなかったので、そのスケールで正確な情報取得に必要なキャリブレーション、結果が正しいことをチェックする基準との比較が欠如していた。これは、そのスケールで正しい情報を得るために必要である。顕微鏡は精密(precise)であるかも知れない、つまり単一の分子あるいはナノ粒子に対して同じ位置を一貫して示している。しかし、同時に、それは極めて不正確(inaccurate)でもあり得る。顕微鏡で特定される10億分の1m内の対象の位置は、実際には、説明できな誤差により、1mの数100万分の1ズレているかも知れない」とNISTのJon Geistは指摘している。
 その問題に対処するためにNISTは、これらのイメージング誤差を調べ補正する新たなキャリブレーションプロセスを開発した。そのプロセスは基準材料、よく知られていて安定した特性を持つ物質を使う。そうした基準材料は量産可能であり、個々の研究室に普及している。
 これは重要である。光学顕微鏡は、微妙な生物標本から電気デバイス、機械デバイスまで、様々なサンプルを簡単に拡大できる一般的な研究室機器だからである。その上、光学顕微鏡はますます能力が高まり、経済的になってきている。科学バージョンの光源やスマートフォンのカメラを組み込んでいるからである。
 NISTのチームは、ナノメートルスケールの製造工程を利用して基準材料を開発した。研究チームは、電子ビームとイオンミリングを使って、ガラススライド上のプラチナ薄膜を通るピンホールアパチャアレイを作製した。そのプロセスにより研究チームは、5000nm間隔のアパチャを開けることができた。精度は約1nmである。こうして研究者は、計測精度をアパチャ位置に組み込んだ。
 アパチャアレイを通して光を照射すると、イメージング点アレイができる。しかし全ての顕微鏡レンズは不完全性があるので、イメージング中の誤差は不可避的に起きる。それらが点の視位置を変え、アパチャ間の間隔が、チームが設計した実際の間隔よりも大きく、あるいは小さく見える。真の間隔のを知っていると、広い視野で高精度に、イメージング誤差の補正、位置計測に対する顕微鏡の校正ができる。
 わずかな誤差でも大きな問題になり得る。例えば、実際の倍率103倍の顕微鏡が、メーカーが規定したように見込倍率が100倍の場合を考える。距離が広いと、結果として生ずる3%の誤差が、顕微鏡画像で累算する。レンズの欠陥により、微妙な問題も起こる。顕微鏡の倍率が画像で変わり、画像歪となる。この問題を解決するためにNISTのチームは、広い視野で機能する、アパチャアレイとキャリブレーション(校正)プロセスを設計した。
 アパチャアレイにより、個々の研究者が自分の研究室でキャリブレーションを行うことができ、光学顕微鏡の能力を10000倍改善して、単一分子やナノ粒子の位置を正確に見つけることができる。
 そのアレイを使って自分たちの光学顕微鏡をキャリブレートした後、チームはそのプロセスを反転させた。ナノ製造工程から、プロトタイプアレイの欠陥を特定するために自分たちの顕微鏡を使った。「われわれは、アパチャ間隔を制御するナノ製造限界を試験した」とNISTのNanoFabマネージャ、Rob Ilicはコメントしている。光学顕微鏡の簡便さとスピードは、製造工程におけるアパチャアレイの品質制御を容易にする。
 最終的にチームは、蛍光ナノ粒子が、光学顕微鏡で固定基準点としてよく使われるように、実際に粒子点に固定されたままであるかどうか、あるいはそれらが動き回るかどうかを評価するためにアパチャアレイの本質的な安定性を利用した。研究チームは、光学顕微鏡の意図しない動きがナノ粒子の見え方を霞ませるとき、アパチャアレイの利用がナノ粒子が実際には原子スケールでは動いていないことを示したことを確認した。
(詳細は、www.nist.gov)