May, 30, 2018, Washington--ワシントン大学の研究チームは、ETH-Zurich、パデュー大学、バージニア・コモンウェルス大学のチームとともに、情報技術を変革する光通信ブレイクスルーを達成した。
研究チームは、現在の技術よりも数10倍高速に電気ビットを光に変換する、人の髪の毛よりも小さなデバイスを作製した。
「情報技術の以前の進歩と同様に、これはわれわれの生活に劇的な影響をもたらす」とUW化学教授、Larry Dalton氏は言う。
これら新しい電気-光デバイスは、現在の電子回路素子のサイズに近く、フォトニクスとエレクトロニクスをシングルチップに集積するために重要である。新技術は、粒子、電子とフォトンの中間的特性を持つ、プラズモンポラリトンの利用にも関与している。このハイブリッド粒子技術は、プラズモニクスと言われている。研究成果は、Natureに発表された。
ETH-Zurichの院生、論文の筆頭著者、Christian Haffner氏によると、デバイスはプラズモン変調器として作製された。「これは、類例がない。従来の実装はプラズモニクスではなくフォトニクスに依存しているからである。実際、プラズモニクスは、最高光損失という代償を払う技術としてあらゆる業界で知られてるので、研究者はプラズモニクスを避ける。とは言え、そのような高損失に苦しむことなくプラズモニクスを使う秘訣が見つかったため、これは最も素晴らしい発見である」。
コンピューティング、通信、センシング、制御技術の情報取扱能力を増やすために、データには広範囲の距離で高帯域通信が必要となっており、信号の劣化なく、多くのエネルギーを使うことなく、熱を発生しすぎることのない通信が求められている。それこそ、Natureの記事の技術が適合するところである。EO変調と言われるデバイスは電気信号を光信号に変換し、信号は光ファイバケーブル、あるいはワイヤレスで衛星やセルタワーを介して空間伝送される。これは、膨大なデータ量を処理できる、非常に小さなデバイスを用いて優れたエネルギー効率で達成されなければならない。
「デバイスは、極めて小さな電界に反応できる、高感度でなければならない。デバイス制御に必要とされる電界が小さければ、消費電力も同様に小さい。全てのアプリケーションでエネルギー効率は極めて重要なので、この点は重要である。コンピューティングあるいは通信アプリケーションで発熱や情報劣化は避けたい」と論文の共著者、Dalton氏は話している。
この最新の成果は、2000年のブレイクスルーに続くものである。当時、研究チームは、新設計のEOポリマ/プラスチックを発表した、これはセンチメートル長のデバイスに組み込まれ、1V以下、100GHzを超える帯域で動作可能であった。残念なことに、これらのデバイスは、電子データ生成素子と比べると著しく大きく、エレクトロニクスやフォトニクス素子にシングルチップ集積には適していなかった。
しかし、プラズモニクスへ移行することで、このフットプリント問題は解決された。国際研究チームが、プラズモニクスの有機電気-光材料を組み込むことでデバイスの改善を始めたとき、全てがスタートした。光が、金などの金属表面に作用する時にプラズモンが生成する。するとフォトンは、そのエネルギーの一部を金属表面の電子に伝え、電子が振動する。これら新しいフォトン-電子振動は、プラズモンポラリトンと呼ばれている。プラズモンポラリトンによる動作により、光回路のサイズは大幅に低減し、帯域動作は、フォトニクスの何倍にもなる。2000年の発見と比較すると、新デバイスの帯域は、ほぼ10倍に増加し、エネルギー必要量はほぼ1000倍少なくなり、加熱低減となる。
しかし、プラズモニクスのアキレス腱は、光損失であると言われている。伝送距離にともなう信号劣化は、エレクトロニクスほど悪くないが、プラズモニクスの信号劣化は、フォトニクスの場合と比べると著しく悪い。
「ETHとパデュー大学の研究チームは、プラズモン損失に対処するエレガントなデバイスアーキテクチャを考案し、プラズモニクスとフォトニクスの組合せを使うことでオールフォトニック変調器に匹敵する損失を達成した」とDalton氏は説明している。
同氏は、デバイスをエレクトロニクス、フォトニクスおよびプラズモニクスのエレガントな統合と呼んでいる。有機電気-光材料を使い信号処理オプションの全てを統合することが可能になる。
「これは、プラズモニクスと有機電気活性材料における二重に大きな進歩である。材料予測、設計、合成と適切な最適化の間の創造的反復を通じて可能になった」と国立科学財団の材料研究部門ディレクタ、Linda S. Sapochak氏はコメントしている。
チップにエレクトロニクスとフォトニクスを統合することは、情報技術進化における重要な次のステップとして10年以上前から認識されていた。
新しいデバイスのアプリケーションは、利用する光波長に基づいて2つのカテゴリに分けられる。光通信、コンピューティングの光インタコネクトは、光周波数(赤外光)で光(フォトン)を利用するが、レーダやワイヤレス通信などのアプリケーションは、無線周波数やマイクロ波(長波長)領域の電子放射を利用する。