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Science/Research 詳細

光による量子コンピュータの実現に大きく迫る手法を開発

May, 29, 2018, 札幌--北海道大学大学院情報科学研究科の富田章久教授、同 博士後期課程の福井浩介氏、京都大学 大学院理学研究科の藤井啓祐 特定准教授らの研究グループは、光を用いた量子コンピュータを現在の技術レベルで実現させる方法を開発した。
 量子コンピュータは、量子力学の重ね合わせの原理を利用することで、素因数分解、分子の性質・化学反応のシミュレーションなどを現在のコンピュータより遙かに高速に処理できることが期待されており、世界各国で盛んに研究・開発されている。量子コンピュータの基本単位である量子ビットとしては、超伝導の磁束、電子のスピンなどさまざまな候補があるが、研究グループでは大規模な量子計算の実現に有利であるとされる光に注目してきた。しかし、光を用いた量子計算の実現には、370兆回の演算あたり1回以下の誤りしか許されず、現在の技術レベルでは達成が非常に困難だった。
 これまでに研究グループでは、光の性質を活用することで量子ビットに発生する誤りを訂正する能力を最大限引き出す方法「アナログ量子誤り訂正法」を開発してきた(この研究成果は米国科学誌「Physical Review Letters」に2017年11月3日に掲載済み)。今回研究グループは、誤りの発生を極限まで抑えながら量子ビットを配列する方法を新たに提案した。また、アナログ量子誤り訂正法と量子ビットの配列法を組み合わせることで、約1万回の演算あたり1回以下の誤りであれば量子計算が実現できるという、これまでの約100億倍誤りに強い方法を新たに開発した。この誤り率は現在の技術レベルでも到達可能なことから、光を用いた量子コンピュータの実現に大きく近づくことができた。この研究は、光を用いた量子コンピュータの現実的な構成法を世界で初めて明らかにした先駆的な研究であり、この分野の発展をさらに加速させることが期待される。
 研究成果は、米国科学誌「Physical Review X」に掲載された。
(詳細は、www.jst.go.jp)