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光レクテナの効率と安定性を強化

February, 15, 2018, Atlanta--2015年に初の光レクテナを発表した研究チームは、今回、2倍に向上したデバイスの効率、また空気中で安定するダイオード材料に替えたことを報告している。
 究極的に、研究チームは、カーボンナノチューブ(CNT)とダイオードレクティファイアとを組合せたデバイス設計が、太陽光や他の光源からの電気の生成で、従来のフォトボルテイック(PV)技術に対抗できると考えている。レクテナで使用される同じ技術は、熱エネルギーを直接電気に変換することもできる。
「この研究は、光レクテナデバイスの基本的理解と実用的な効率の両方で大きな前進である」とジョージア工科大学(Georgia Institute of Technology)の准教授、Baratunde Colaは説明している。
 研究成果は、Advanced Electronic Mateiralsに発表されている。
 
光レクテナは、光の電磁場をアンテナに結合することで動作する。この場合、端が開放されている多層CNTアレイ。電磁場がアンテナ内で振動を作り、電子を交互に流す。電子流がアンテナ片端のピークに届くと、ダイオードが閉じ,電子を捕らえ,また再開して次の振動を捕らえ、電流を作る。
 その切り替えが光に一致するにはTHz周波数で起こらなければならない。アンテナとダイオードの間のジャンクションは、開いている間それを通って流れる電子の流れに対して最小抵抗でなければならないが、閉じている間は漏れを防がなければならない。
「最重要点はCNTで励起される電子の数を最大にすること、さらにピークで電子を捕らえられるだけの高速スイッチである。スイッチが速ければ速いほど、振動の片端で捕らえることができる電子はますます増える」とColaは説明している。
 仕事関数を低くして電子の流れを容易にするために研究チームはまず、金属ダイオードジャンクション、酸化物絶縁体の金属としてカルシウムを使用した。しかしカルシウムは空気中で急速に崩壊する、つまり動作中にデバイスをエンカプセルしなければならなかった。したがって、グローブボックス内に作製した。このため、光レクテナは、ほとんどのアプリケーションで非実用的となり、製造が難しくなった。

 したがって、Colaは、カルシウムをアルミニウムに置き換えた。また、アルミナ(Al2O3)と二酸化ハフニウム(HfO2)で構成される二分子層材料にセットする前にCNTで様々な酸化物材料を試した。原子堆積プロセスで作製したCNTジャンクション用の組合せコーティングにより、金属の代わりに酸化物電子特性のエンジニアリングに必要となる量子力学電子トンネリング特性が得られる。これによってカルシウムよりも高い仕事関数の空気安定金属が使用できるようになる。
 新しい組合せで作製されたレクテナは、一年機能し続けた。Colaによると、他の金属酸化物も使える。
「酸素電子の親和性を利用すると、非対称性が10倍以上向上し、このダイオードデザインがより魅力的になった。デバイスのこの新しいバージョンで効率向上が得られたのはそのためである」とColaは話している。
 光レクテナは、理論的には、太陽光を電気に換える点で、フォトボルテイック(PV)材料に匹敵する。PV材料は、違う原理で動作する。フォトンがある材料の原子から電子をたたき出す。電子は集められて電流になる。
 光レクテナは40年前に理論的に提案されていたが、実証はされていなかった。Cola とBougherが初めて光レクテナを報告したのは2015年9月である。
 初期のバージョンは,マイクロボルトレベルのパワーであったが、現在はミリボルトレンジになっている。研究チームによると、まだ大きく改善する余地はある。
 光レクテナは、IoTデバイスへの給電に役立つと研究チームは見ている。特に熱エネルギーから電力を生成する用途に利用可能であると期待されている。熱を電気に変換するのは、原理は光と同じである。
(詳細は、www.gatech.edu)