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UMD-NIST 53qubit量子シミュレータで量子コンピューティング前進

January, 23, 2018, College Park--メリーランド大学(UMD)研究チームとNISTは、磁気量子問題を再現するために、相互作用する53の原子キュービット(qubits)を使う量子シミュレータを作製した。このブレイクスルー以前には、主要研究者は20qubits以下の量子シミュレータしか造れなかった。
 量子シミュレータは、qubitsを使って複雑な量子問題を再現する限定的な量子コンピュータ。53の個別イッテルビウムイオン(金被覆と非常に鋭い電極によって捕捉された、電荷を帯びた原子)を導入することで、UMD-NIST量子シミュレータは、現代の最速スーパーコンピュータでさえ達成できない物理学探求の最前線にある。
 qubitシミュレータの構築は、どんな計算問題にも取り組むことができる本格的な量子コンピュータ構築のための重要な一歩である。UMD-NISTチームによると、さらに多くのqubitsを追加することは、その混合により多くの原子を取り込む問題でしかない。
 UMD物理学部、ポスドク研究者、Jiehang Zhangは、100を超えるqubitsを制御することができると言う。「その時点で、われわれは量子化学、材料設計の難しい問題を探求することができる」。
 また、UMDチーム、IonQ Incの共同創始者/チーフサイエンティスト、Christopher Monroeは、「各イオンqubitは、完全に複製できる安定した原子時計である。それらは、外部のレーザビームと効果的に接続できる。すなわち、その同じデバイスが外部から再プログラム、再構成できる。これにより、どんなタイプの量子シミュレーション、今後現れる量子コンピュータアプリケーションに適合する」とコメントしている。
 現在のトランジスタベースのコンピュータは、20を超える相互作用する量子物体を扱うとき、停止することがあり得る。相互作用が磁気整列に、量子スケールで利害衝突の寄せ集めになる量子磁性では、確実にそうなる。
 「この問題を難しくしているのは、個々の磁石が全ての他の磁石と相互作用することである。この実験の、53の相互作用する量子磁石では、1000兆の可能な磁石構成があり、この数字は磁石を追加する毎に倍になる。従来のコンピュータでこの巨大な問題をシミュレートすることは、可能だとしても、極めて難しい」とUMD研究者、Zhexuan Gongはコメントしている。
 このような計算が壁に突き当たるとき、研究者が困難な問題で限界を超えるための助けになるのが量子シミュレータである。qubitsは分離されており、十分にコントロールされたシステムであり、同時に2つ以上の状態を組み合わせることができる。qubitsは様々な形態で現れる、つまり全てのものの構成要素である原子は、qubitsを造るための優れた選択肢の1つである。最近の研究では、研究者は、小規模の量子シミュレータで、10~20の原子qubitsをコントロールしている。
 現在、技術的な巨大企業、スタートアップ、大学の研究者が競って、さらに多くのqubitsをコントロールできるプロトタイプ量子コンピュータを実現しようとしている。しかしqubitsは壊れやすく、そのデバイスの量子性を保護するには環境から隔離しなければならない。qubitを追加する毎に、この保護はますます難しくなる。特に、製造された回路にあるように、qubitsが最初から同じでない場合、難しくなる。大規模な量子機構まで拡張するプロセスを飛躍的に簡素にできる魅力的な選択肢に原子が選ばれる理由の1つはこういうことである。
 現在のコンピュータの集積回路と違い、原子qubitsは、圧力を外部と同じにした室温真空チャンバにある。この隔離は、破壊的な環境を寄せつけないために必要である。また、これにより研究者は、レーザ、レンズ、ミラー、光ファイバおよび電気回路の人工的ネットワークで原子qubitsを精密制御できる。
 「量子コンピューティングの原理は、従来のコンピューティングの原理とは根本的に異なる。よって、これら2つの技術が同じように見えることはない」とMonroeは話している。
(詳細は、www.umd.edu)