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生細胞をかつてないほど詳細に見ることができるハイパーレンズ結晶

hyperlens

December, 19, 2017, Nashville--ヴァンダービルト大学(Vanderbilt University)機械工学准教授、Joshua Caldwellをリーダーとする研究チームは、生きた細胞表面の微小ウイルスサイズの特徴を自然環境で見ることができる強力な光学レンズを開発した。
 この機能をもつ計測器の作製が可能になっている。ハイパーレンジングで使用される光学材料品質の基本的進歩によるものである。ハイパーレンジングは、光波長よりも遙かに小さな対象を解像できるレンズの作製法。
 関連する光学材料は六方晶窒化ホウ素(hBN)、ハイパーレンジング特性を持つ自然結晶。hBNを用いて、これまでに報告された最高の解像度は、利用する赤外波長よりも約36倍小さな対象であり、これはほぼ最も小さなバクテリアのサイズ。新しい成果は、その潜在的イメージング能力を10倍強化する結晶品質の改善を報告している。
 研究チームは、同位体制御されたピュアホウ素を用いるhBN結晶によりこの成果を達成した。自然のホウ素は、重量が約10%異なる2つの同位体を含む。これは、赤外で結晶の光学特性を著しく劣化させる組合せである。
 研究チームの計算によると、純化された結晶で造られたレンズは原理的に、30nmサイズの対象物の画像を撮ることができる。わかりやすく言うと、1インチは2500万ナノメートル(nm)、ヒトの髪は直径が80000~100000nm。ヒトの赤血球は約9000nm、ウイルスは20~400nmである。
 ハイパーレンズ開発の主な理由は、細胞に損傷を加えることのない低エネルギー光を使って生きた細胞の極めて詳細な画像をその自然環境で捉えることができるという見通しである。さらに、赤外光を使うイメージングは、撮像する対象物についての分光学的情報をもたらす事ができる、すなわち材料をフィンガープリントする手段である。この能力は生物学や医学に大きな影響を与える。通信やナノスケール光コンポーネントにも潜在的アプリケーションがある。
 ハイパーレンズの物理学は極めて複雑である。光学顕微鏡が撮像できる詳細度は光波長とレンズ材料の屈折率によって制限されている。レンズ口径、対象物からレンズまでの距離、観察する対象物の屈折率をまとめると、これはイメージングで使用される波長の約1/2という一般的な光学的限界になる。この実験で使用した赤外波長では、この「回折限界」は約3250nmである。この限界は、hBNを使うことで抑制できる、これは表面フォノンポラリトンをサポートするその能力によるものである。表面フォノンポラリトンは、ハイブリッド粒子で、結晶で振動する電荷を帯びた原子と結合したフォトンでできており、入射光よりも遙かに波長が短い。
 過去には、このような方法でポラリトンを使う時の問題は、ポラリトンが急速に消散することだった。99%同位体純化ホウ素でできたhBN結晶を使うことで、研究チームは自然の結晶と比較して光学損失の著しい減少を測定した。ポラリトン寿命は3倍に延びた。これによりポラリトンが動く距離は3倍になる。この改善は、イメージング解像度の大幅な向上となる。研究チームの理論分析では、さらに10倍の改善が可能である。
(詳細は、www.vanderbilt.edu)